乳房の放射線治療のあと、硬さや色が気になるとき

乳房の放射線治療後に起こる硬さ・色素沈着・毛の変化について解説するコラムのアイキャッチ 治療後の生活

治療が終わって数か月。

ブラジャーをつけたとき、治療した側の乳房が少し小さくなったように見える。
触ってみると、前より硬い気もする。

赤みは引いたのに、元どおりになったわけではない。
色の違いも残っているし、そういえば、わきの毛も生えてこなくなった。

「これから、まだ変わっていくのかな」
「それとも、ずっとこのままなのかな」

放射線治療が終わり、体が少し落ち着いてきたころ。
それまで気にする余裕がなかった乳房の変化に気づき、ふと不安になる方は少なくありませんでした。

今日は、乳房の放射線治療後に起こることがある硬さ・色・毛の変化を、
「戻るのか、残るのか」という目線で整理します。

(この記事は、主に乳房温存手術後に、残った乳房へ放射線を当てた方を想定しています。乳房全切除術後に胸壁へ照射した場合など、手術方法や照射範囲によって起こりやすい変化は異なります。ご自身の状態や今後の見通しは、治療内容を知る主治医に確認してください。)

治療後に起こりうる変化ですが、見た目だけでは原因を決められない

乳房の硬さや色の変化は、放射線治療後に起こることがあります。

放射線は、がん細胞だけでなく、放射線が当たった範囲の皮膚やその下の組織にも影響します。

そのため、治療した側だけに、触り心地や見た目の変化が出る場合があります。

ただし、手術による組織の変化やむくみなど、別の要因が重なっていることもあります。

新しく気づいた硬さや色の変化が、放射線治療の影響によるものかどうかを、
見た目や触った感じだけで判断することはできません。

治療後に起こりうる変化だと知っておくこと。
そして、確認したほうがよい変化も知っておくこと。

その両方が大切です。

硬さ・張り:早い時期の腫れと、あとから残る変化は分けて考える

乳房温存手術後に放射線治療を受けた場合、治療中から終了後まもない時期に、
乳房全体が腫れて、張ったり、やや硬く感じたりすることがあります。痛みを伴う方もいます。

この時期の腫れや張りは、時間とともに軽くなっていくことがあります。

一方で、治療が終わって数か月たってから、
照射した側の乳房が以前より小さくなったように見えたり、
硬さやつっぱりが残っていることに気づいたりする方もいます。

放射線が当たった組織が硬くなる変化を、医療者から「線維化」と説明されることもあります。

こうした変化は、時間がたっても残る場合があり、
「数か月待てば必ず元どおりになる」とは言い切れません。

また、腕やわきのむくみが、乳房の張りや重さのように感じられる場合もあります。

腕の太さの左右差や、指輪・腕時計のきつさも気になる方は、乳房の放射線治療後の腕のむくみについての記事も参考にしてください。

見た目には大きな変化がなくても、本人にとっては、
触ったときの感触や下着をつけたときの左右差が気になる。

その感覚は、診察で伝えてよい情報です。

次の診察を待たずに相談したほうがよい変化

硬さがあるからといって、それだけで再発を意味するわけではありません。

ただし、新しく気づいた変化の原因は、診察をしなければ分かりません。
次の定期診察がしばらく先で、次のような変化があるときは、
予約日まで待つべきかも含めて病院へ連絡してください。

  • 新しいしこりや、部分的に硬いところに気づいた
  • 硬さやしこりが大きくなってきた、短い間に変化している
  • 乳房や胸壁が急に腫れた、赤みや熱感が出てきた
  • 痛みが強くなっている
  • 皮膚のただれやジュクジュクした状態が続く、またはひどくなっている
  • 赤みや熱感に、発熱や寒気を伴っている

これは、「再発かもしれない」と一人で結論を出すための目安ではありません。

今の変化を、いつ、どこで確認してもらえばよいかを病院と決めるための目安です。

まずは、現在かかっている主治医へ相談してください。

必要があれば、主治医から放射線治療を受けた病院へ問い合わせてもらう方法もあります。

なお、放射線治療のあとに「別のがん」ができることを心配される方もいますが、
それは、今回お話ししている硬さや色などの変化とは別の話です。

気になる方は、放射線治療後の二次がんについての記事も参考にしてください。

色の変化:薄くなるまで、1年以上かかることもある

放射線を当てた範囲の皮膚は、日焼けのあとに似て、茶色や黒っぽく見えることがあります。

これを色素沈着といいます。

多くの場合、色は時間とともに少しずつ薄くなっていきます。

ただし、その速さには個人差があります。

黒ずみが薄くなるまでに1年以上かかることや、周りの皮膚との色の差が残る場合もあります。

治療が終わってしばらくたっても色が残っていると、
「私だけ、戻っていないのかな」
と思うかもしれません。

けれど、色がゆっくり変化すること自体は、放射線治療後に知られている経過の一つです。

気になるからと強くこすっても、色を早く落とせるわけではありません。

かえって皮膚への刺激になるため、やさしく扱うことを続けてください。

色だけでなく、赤み・熱感・痛み・ただれが続いているときは、
「色素沈着だろう」と決めず、主治医へ相談しましょう。

毛の変化:3〜6か月で生えてくることが多い一方、残る変化もある

放射線治療による脱毛は、放射線を当てた範囲だけに起こります。

乳房やわきの一部が照射範囲に入っていた場合、その部分の毛が抜けたり、
生えにくくなったりすることがあります。照射していない場所の毛まで抜けるわけではありません。

多くの場合、治療後3〜6か月くらいで、毛が生えてきたと感じられるようになります。

ただし、照射した放射線の量などによっては、生えてこないこともあります。
再び生えても、以前より細い、少ない、まばらに見えると感じる方もいます。

治療後に毛が生えてこないことに気づき、今後の見通しを知りたいときは、
照射範囲や放射線の量を把握している放射線治療科の医師や看護師に確認できます。

治療が終わって間もない方は、皮膚の反応があとから強くなることも

放射線による皮膚炎は、照射がすべて終わってから1〜2週間ほどが、
もっとも強くなりやすい時期です。

治療後1か月くらいは、治療中と同じように、
こすらないことや皮膚への刺激を避けることを続けるとよいとされています。

治療中から直後にかけての洗い方・保湿・下着の工夫は、乳房の放射線治療中の皮膚ケアについての記事にまとめています。

「終わった」を、うまく喜べない日があっても

治療が終わると、周りの人は「終わってよかったね」と言ってくれます。
その言葉は、ありがたいものです。

でも、体には変化が残っていて、鏡を見るたびに治療のことを思い出す。

「終わったはずなのに、なんだかすっきりしない」

そう感じることもあります。

治療が終わることと、体や気持ちが元どおりになることは、
同じタイミングで訪れるとは限らないからです。

まだ気になることがあるのは、わがままでも、後ろ向きでもありません。
無理に「終わってよかった」という気持ちだけに寄せなくてもよいのだと思います。

「これって、戻るんですか?」と聞きたいとき

放射線治療室にいたころ、

「この硬さ、戻るんですか?」
「色は、もう消えないんでしょうか」

と聞かれることは、本当に少なくありませんでした。

私はまず、「心配になりますよね」と気持ちを受けとめて、診察で聞きたいことを一緒に整理したり、
必要なときは医師に確認して、その答えをお伝えしたりしていました。

戻るかどうか、どのくらいで落ち着くかは、
手術の方法、放射線を当てた範囲や量、その人の体質などによって異なります。

だから、「必ず戻ります」とも、「もう戻りません」とも、簡単には言えません。

次の診察では、たとえば、こう聞くと状況を整理しやすくなります。

  • 「この硬さは、治療後に起こる変化の範囲でしょうか」
  • 「これから薄くなったり、やわらいだりする見込みはありますか」
  • 「どんな変化があれば、次の予約日を待たずに連絡したほうがよいですか」

見通しをもっとも具体的に答えられるのは、
あなたが受けた手術と放射線治療の内容を知っている医療者です。

見た目の変化がつらいときは、外見のケアも相談できる

色や毛、乳房の左右差など、見た目の変化がつらいとき。

がんや治療に伴う外見の変化に対する支援は、「アピアランスケア」と呼ばれています。

年齢や性別にかかわらず、必要なときには誰でも相談できます。

「病気そのもののことではないから」と、後回しにしなくてもよいです。

どんな工夫ができるか、どこに相談すればよいかは、治療を受けた病院の看護師や、
がん相談支援センターで聞くことができます。

気になることは、メモして次の診察へ

治療が終わると、診察の間隔は少しずつあいていきます。

「前の診察のころより、硬くなった気がする」
「色が少し変わってきた」

そう感じたことは、気づいた日にメモしておくと、次の診察で伝えやすくなります。

  • いつ気づいたか
  • どの場所が気になるか
  • 前と比べて、どのように変わったか
  • 痛み・熱感・腫れなど、ほかの症状はあるか
  • 下着が合わない、見た目が気になるなど、生活の中で困っていること

診察室でうまく説明できなくても、書いたものを見せれば伝えられます。

治療後の変化に気づくたび、
「これはよくあることなのか」「確認したほうがよいのか」と悩むのは自然なことです。

一人で答えを決めるのではなく、気づいた変化をそのまま、
今かかっている主治医へ相談してみてください。

気持ちや生活上の悩みも含めて相談したいときは、全国の「がん相談支援センター」も利用できます。

その病院にかかっていない方やご家族も、無料・匿名で相談できる窓口です。


※この記事は、放射線治療を受けた方とご家族に向けた一般的な情報の整理です。診断や治療方針を示すものではありません。症状の原因や見通しには個人差があり、ここに書いた内容がすべての方に当てはまるわけではありません。気になる症状や今後の見通しについては、現在かかっている主治医にご相談ください。

参考情報

タイトルとURLをコピーしました