骨盤まわりの放射線治療を受けたあと、
「尿が近くて、外出先でもトイレの場所ばかり気になる」
「急に便意がくるのが怖くて、電車に乗るのが不安」
「治療は終わったのに、まだ元の生活に戻れない」
そんなふうに感じることがあります。
治療中は、毎日通うことだけで精一杯で、
「治療が終われば、少しずつ楽になるはず」
「終わるまでの辛抱」
と思って過ごしていた方もいるかもしれません。
それなのに、治療が終わったあとも、
尿が近い感じや、お腹のゆるさ、急にトイレへ行きたくなる不安が残ると、
「私の体は、ちゃんと戻るのかな」
「このまま外出しにくい生活が続くのかな」
「こんなことまで診察で話していいのかな」
と不安になることがあります。
この記事では、
骨盤まわりの放射線治療後に、頻尿や急な便意、下痢などで外出が怖くなるとき、
どんなふうに困りごとを整理し、診察で伝えればよいか
をまとめます。
骨盤まわりの放射線治療でトイレの不安が出ることがある
骨盤まわりには、膀胱、直腸、腸、前立腺、子宮や卵巣など、
排尿や排便に関わる臓器が近くにあります。
そのため、骨盤まわりに放射線治療を行う場合、
治療中や治療後に、次のような変化が出ることがあります。
- 尿が近い
- 急に尿意がくる
- 排尿時に違和感がある
- 下痢っぽくなる
- 急に便意がくる
- お腹が落ち着かない
これらの症状は多くの場合、治療が終わると徐々に落ちついていきます。
ただし、治療終了後もしばらく症状が続いたり、
数か月以上たってから難治性の下痢が起こることもあるとされています。
また、膀胱や尿道の粘膜に炎症が起こると、排尿時の痛み、血尿なども起こることがあります。
ここで大切なのは、
「放射線治療をしたから、全部仕方ない」と決めつけないことです。
同じ「尿が近い」「下痢がある」でも、原因や必要な対応は人によって違います。
また、放射線治療の影響だけでなく、
感染、薬の影響、脱水、食事量の低下、体力の低下、もともとの病気などが関係していることもあります。
だからこそ、症状に生活に影響が出ているときは、診察のときに伝えてよいことです。
つらいのは、症状そのものだけではない
頻尿や急な便意でつらいのは、回数が増えることだけではありません。
- 外出前に、まずトイレの場所を探す
- 電車に乗る前に、途中で降りられるか考える
- 買い物中も、トイレが近くにあるか気になる
- 長い列に並ぶのが怖くなる
- 友人との約束を入れにくくなる
- 家族にも「またトイレ?」と思われそうで言いにくくなる
- 眠れない
症状そのものだけではなく、
「急に行きたくなったらどうしよう」
「間に合わなかったらどうしよう」
「外で具合が悪くなったらどうしよう」
という不安が、生活の範囲を狭めてしまうことがあります。
治療後に体が少しずつ戻る時期でも、こうした不安があると、外出する前から疲れてしまいます。
「今日はやめておこう」
「近場だけにしておこう」
「電車は怖いから、家にいよう」
そうやって予定を減らしているうちに、体だけでなく、気持ちまで閉じこもってしまうこともあります。
これは、単なる気にしすぎではありません。
トイレの不安で外出や生活に影響が出ているなら、それは診察で伝えてよいことです。
どう困っているかまで伝わると相談しやすくなる
診察で伝えるときは、最初から上手に話そうとしなくて大丈夫です。
まずは、
「尿が近いです」
「下痢があります」
「急にトイレに行きたくなるのが不安です」
だけでも、十分に大切な情報です。
さらに診察の短い時間どう困っているのかを伝えるには、少し具体的にメモしておくと役立ちます。
排尿の不安があるときにメモしておきたいこと
- 1日に何回くらいトイレに行くか
- 夜中に何回起きるか
- 急に我慢できない感じがあるか
- 排尿時に痛みやしみる感じがあるか
- 尿に血が混じることがあるか
- 外出を控えるほど困っているか
排便の不安があるときにメモしておきたいこと
- 1日に何回くらい便が出るか
- 便の状態は水っぽいか、少し形があるか
- 急に便意がくるか
- 腹痛があるか
- 血便や出血があるか
- 水分や食事がとれているか
- 外出や仕事に影響しているか
このあたりをメモしておくと、医療者も「生活の中でどれくらい困っているのか、どう対応するべきか」を考えやすくなります。
診察で何をどう伝えればいいか迷う方は、こちらの記事も参考にしてください。
→ がん治療の診察前メモの記事
例えば、外出を控えるほど困っている場合は、そこまで伝えてください。
「頻尿があります」だけだと、医療者側には生活への影響が伝わりにくいことがあります。
でも、
「尿が近くて、電車に乗るのが怖いです」
「急に便意がくるのが不安で、買い物も短時間で切り上げています」
「友人との約束を入れられなくなっています」
と伝えると、症状が生活をどれくらい狭めているかが伝わりやすくなります。
次の診察を待たずに相談した方がよいこと
トイレの不安は、
「恥ずかしいから」
「治療が終わったからそのうち良くなる」
「我慢すれば済んでいく話だろう」
と我慢してしまいやすい症状です。
ただし、中には早めに病院へ相談した方がよい変化もあります。
次のような症状があるときは、次の診察を待たずに病院へ相談してください。
- 痛みがある
- 出血がある
- 血尿がある
- 発熱がある
- 急に症状が悪くなった
- 水分がとれない
- 下痢が続いてぐったりする
- 尿が出にくい
- 強い腹痛がある
頻尿や尿漏れの症状が急に悪くなったり、強い痛みや血尿などを伴ったりする場合は、
早めに相談が必要になることがあります。
下痢が続くと脱水につながることもあります。
水分がとれない、ぐったりする、急に悪化しているときは、家で様子を見続けず、
病院に相談してください。
自己判断で、
「放射線のせいだから仕方ない」
「治療が終わったから、もう言うことではない」
と決めつけないことが大切です。
外出前にできる工夫
診察で相談することと同時に、外出前の不安を少し軽くする工夫があります。
- 出かける前にトイレの場所を確認しておく
- 長時間の移動は、途中で降りられる経路を選ぶ
- 予定を詰め込みすぎない
- トイレに行きやすい服装にする
- 替えの下着やナプキン、パッドを持っておく
- 冷えでトイレが近くなる場合は、腰まわりを冷やさない
- 水分を極端に減らしすぎない
「トイレの場所を確認する」と聞くと、
余計に不安に向き合うようで嫌に感じる方もいるかもしれません。
でも、確認する目的は、不安を大きくすることではありません。
「もし行きたくなっても、ここにある」と分かることで、外出のハードルを少し下げることができます。
また、尿が近いからといって、水分を極端に控える方がいらっしゃいます。
極端に控えることが脱水や体調不良につながることもあります。
水分のとり方に迷う場合も、病院で相談してください。
下痢がある場合も、食事を極端に減らす、自己判断で薬を使う、症状を隠して我慢するのではなく、
治療を受けている病院に相談しながら対応を考えることが大切です。
家族に伝えるなら、「症状」より「困っている場面」を伝える
トイレの不安は、家族にも言いにくいことがあります。
「頻尿で」
「下痢がある」
と直接言うのがつらい方もいるかもしれません。
そんなときは、
- 今は外出先でトイレが近くにないと不安
- 急にトイレに行きたくなることがあるから、移動時間を短くしたい
- 人が多い場所や長い列は、今は少し怖い
- 予定を入れるなら、トイレに行きやすい場所にしたい
このように、生活の場面で伝えると、家族も手伝いやすくなります。
家族は、症状そのものを治すことはできません。
でも、
- 移動時間を短くする
- トイレに行きやすい場所を選ぶ
- 予定を詰め込みすぎない
- 途中で休めるようにする
- 「また?」と言わずに待つ
こうした工夫を一緒に考えることにつながります。
おわりに
放射線治療は、治療が終わった瞬間に、体がすぐ元通りになるとは限りません。
治療中に出ていた症状が、治療終了後もしばらく続くことがあります。
多くは時間とともに落ち着いていきますが、症状の続き方や強さには個人差があります。
だからこそ、
「もう治療は終わったから」
「今さら言ってもいいのかな」
「このくらいは我慢するものなのかな」
と思わず、生活への影響、つらさを診察のときに伝えてください。
- その症状によって、どんな生活が難しくなっているか
- どんな外出を避けるようになっているか
- どんな不安が続いているか
そこまで分かると、診察で対処しやすくなります。
例えば、
トイレの不安で、外出を控えている。
買い物の時間を短くしている。
電車に乗るのが怖い。
友人に会いにくくなっている。
家族にも言えずに困っている。
そういう生活の変化は、治療中も、治療が終わったあとも、診察で話してよいことです。
うまく話せる自信がない時は
「尿が近い」
「急に便意がくる」
「外出が怖い」
「生活にどんな影響が出ているか」
メモして持っていっても良い。
そのメモを見ながら、医療者とこれからの過ごし方を一緒に考えていけることがあります。
治療後の生活を少しでも快適に過ごせるように話し合いましょう。
参考情報
この記事は、以下の公的・医療系情報を参考に作成しました。
・国立がん研究センター がん情報サービス「下痢」
・国立がん研究センター がん情報サービス「頻尿・尿漏れ」
・SURVIVORSHIP.JP「放射線治療の副作用(有害事象)と対策」
※ここでの内容は一般的な情報です。症状の原因や対応は、照射部位、治療内容、がんの種類、併用している治療、体調によって変わります。気になる症状があるときは、治療を受けている病院に相談してください。

