診察室を出たあとで、こう思ったことはありませんか。
「あれ、結局よく分からなかったな」
「聞きたいことがあったのに、言えなかった」
先生は忙しそうだった。
うまく言葉にできなかった。
一度説明されたことを、もう一度聞くのは、失礼な気がした。
そうしているうちに、「次の方どうぞ」となって、診察室を出ていた。
こうした経験をされた方は、本当にたくさんいらっしゃいます。
私が放射線治療室にいたころ、診察のあとの患者さんに、よく声をかけていました。
「先生のお話、大丈夫でしたか? 分からなかったところはありませんでしたか?」
すると、ほっとしたような顔で、
「実は、よく分からなくて」
とお話しくださる方が、少なくありませんでした。
診察室では聞けなかったことが、廊下や処置室では、ポツッと出てくる。
この記事では、診察で聞けなかったとき、そのあとどうすればいいのかを、お話しします。
ここに書くのは一般的な話です。病院の体制や、相談できる窓口は、施設によって違うことがあります。ご自分の通う病院でどうなっているかは、スタッフに確認してみてください。
診察室で聞けないのは、あなたのせいではない
まず、これをお伝えしたいです。
診察室で聞けなかったこと、聞き返せなかったことを、
「自分が弱いから、しっかりしていないから」
と責めないでください。
聞けないのには、ちゃんと理由があります。
先生の前だと、緊張する。
医師の前では、多くの方が緊張します。特に、病気や治療の話を聞くときは、頭が真っ白になったり、あとで思い返すと内容をあまり覚えていなかったりします。これは、誰にでも起こることです。
専門用語が、分からない。
先生は、なるべく分かりやすく話そうとしてくれています。でも、無意識のうちに専門用語が出てしまうこともあります。聞き慣れない言葉が続くと、何が分からないのかすら、分からなくなります。
忙しそうで、聞けない。
外来は、一人あたりの時間が短いことが多いです。次の患者さんが待っているのが分かると、「こんなことを聞いて、時間を取らせては悪い」と思ってしまう。
一度聞いたのに、また聞くのは失礼だと思う。
「さっき説明されたのに、もう一度聞くなんて」という気持ちが、ブレーキになる。
どれも、自然なことです。
でも——分からないまま帰ってしまうと、不安を抱えたまま過ごすことになってしまいます。
治療を受けるのは、あなたです。だから、分からないことは、分からないままにしないほうが安心です。
治療を受けるのは、あなたです。だから、分からないことは、分からないままにしないほうがいい。
「じゃあ、どうすればいいの」というのが、ここからの話です。
医師に聞けなくても、看護師がいる
これが、いちばんお伝えしたいことです。
診察室で先生に聞けなかったとしても、それで終わりではありません。
診察のあとにも、看護師がいます。
外来の看護師、治療室の看護師、病棟の看護師。
診察室の外には、あなたが話しかけられる医療者が、ちゃんといます。
私自身、診察のあとの患者さんに「分からなかったところ、ないですか?」と声をかけて、
お話をうかがっていました。
そして、聞かれたことに看護師として答えられることは答え、
「これは先生に確認したほうがいいな」ということは、先生に伝えていました。
つまり、看護師は、あなたと先生の「あいだ」に立てるのです。
- 先生の説明で分からなかったところを、かみくだいて説明する
- 「こんなこと聞いていいのかな」ということを、代わりに受け止める
- 必要なら、「患者さんがこういうことを気にされています」と、先生に橋渡しする
「先生に直接聞くのは緊張するけど、看護師さんになら言えた」
——そういう方は、たくさんいらっしゃいました。
だから、診察室で聞けなかったら、近くにいる看護師に声をかけてみてください。
「さっきの先生のお話を、もう少し教えてもらえますか」
「聞きたいことがあったんですが、言えなくて」
そう声をかけてもらえれば、看護師は一緒に考えたり、必要に応じて医師へ確認したりしながら、
お手伝いします。
先生は、意地悪をしているわけではない
ここで、ひとつ大事なことを付け加えます。
「先生が忙しそうだった」「顔も見てくれなかった」「パソコンばっかり見てて」という経験をすると、
先生に不信感を持ってしまうこともあるかもしれません。
でも、先生は意地悪をしているわけではありません。
診察の時間が、そもそも短いのです。
もちろん、分からないことがあれば、
「もう一度説明していただいてもいいですか」
とお願いして大丈夫です。
聞き返すことは、決して失礼なことではありません。
限られた時間で、たくさんの患者さんを診て、検査結果を確認して、治療の判断をしています。
頭の中では、いくつものことが同時に動いています。
だから、患者さんの気持ちにまで、手が回りきらないことがある。
それは、先生の人柄の問題というより、外来という仕組みの問題でもあります。
そして、放射線治療は、一人の先生だけで進めるものではありません。
医師、放射線技師、看護師、そのほかの専門職が、チームで関わっています。
だから、先生に聞けなかったことは、チームのほかの誰かに聞けばいいのです。
先生を、たったひとつの窓口だと思わなくて大丈夫です。
院外にも、相談できる窓口がある
「病院のスタッフには、なんとなく聞きにくい」
そういうときのために、病院の外にも、相談できる場所があります。
がん相談支援センターという窓口です。
全国の「がん診療連携拠点病院」などに設置されていて、
がんに詳しい看護師や、生活の相談ができるソーシャルワーカーが、相談に乗ってくれます。
ここには、知っておくと安心なことが、いくつかあります。
- 無料で、匿名で使えます
- その病院に通っていなくても、利用できます(近くの拠点病院の窓口を使えます)
- 電話でも、対面でも相談できます
- 相談した内容が、あなたの同意なしに、担当の先生や病院のスタッフに伝わることはありません
最後のひとつは、特に知っておいてほしいところです。
「こんなことを相談したと、先生に知られたら気まずい」と心配する必要はありません。
あなたが話したことは、あなたの同意なしに、外に出ることはありません。
実際に、がん相談支援センターには、こういう相談がよく寄せられているそうです。
- 先生の説明は、専門用語が多くて難しい
- 先生にどんなことを質問したらいいですか
- こんなことを聞いてもいいでしょうか
あなたが「聞きにくい」と思っていることは、みんなが聞きにくいと思っていることなのです。
分からないまま帰らないための、小さな工夫
最後に、次の診察のために、少しだけ準備できることをお伝えします。
聞きたいことを、紙に書いていく。
診察室に入ると、聞こうと思っていたことを忘れてしまう方は、本当に多いです。書いて持っていって、その紙を先生に見せるだけでも、伝わります。
一人で行かず、家族や親しい人に同席してもらう。
緊張して聞き漏らしても、あとで「先生、なんて言ってたっけ」と確認しあえます。聞く人が二人いるだけで、安心感が違います。
その場で分からなければ、「あとで看護師さんに聞きます」でいい。
すべてを診察室で解決しようとしなくて大丈夫です。「分からなかったところは、あとで看護師さんに聞こう」と思っておくだけで、気持ちが楽になります。
診察で何を伝えたらいいか迷う方は、「診察前メモ」の記事も参考にしてみてください。
聞きたいことを整理してから診察に向かうだけでも、安心して話しやすくなることがあります。
聞ける場所は、診察室だけではない
診察で聞きたいことが聞けなかったとき。
それは、あなたがしっかりしていないからでも、聞くのが下手だからでもありません。
先生の前で緊張するのは、当たり前です。
短い診察時間で、すべてを聞ききるのは、難しいことです。
でも、覚えておいてください。
聞ける場所は、診察室だけではないことを。
診察のあとの看護師。
治療室のスタッフ。
院外のがん相談支援センター。
あなたが「分からない」と言える相手は、思っているより、たくさんいます。
分からないまま、一人で抱えて帰らなくて大丈夫です。
「これ、どういう意味だったんだろう」と思ったら、
どうか、近くの医療者に声をかけてみてください。
この記事の内容について
この記事は、診察で医師に質問できなかったときの対処について、一般的な情報を整理したものです。病院の相談体制や、利用できる窓口は、施設によって異なります。ご自分の通う病院でどうなっているかは、スタッフにご確認ください。この記事は、診断や治療の判断をするものではありません。治療の内容やご自分の体のことについては、必ず担当の医師にご確認ください。
参考情報
- 国立がん研究センター がん情報サービス「『がん相談支援センター』とは」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「『がん相談支援センター』で相談できることの例」
- 静岡県立静岡がんセンター「医師に質問や心配事を言い出しにくい」(がん体験者の悩みQ&A)
- 日本放射線腫瘍学会(JASTRO)「放射線治療Q&A」

