放射線治療は一生に1回だけ? 再発したら、もうできないの?

放射線治療の再照射の可否と「一生に一度」の本当の意味を整理したコラムのアイキャッチ 気持ちの整理

放射線治療を受けることになって、自分でいろいろ調べているうちに、
こんな一文を見かけた方がいるかもしれません。

「放射線治療は、一生に1回だけ」

この言葉を見て、不安になった方もいると思います。

「じゃあ、もし再発したら、もう放射線治療はできないの?」
「1回きりのチャンスを、今使ってしまうということ?」

実際に私も、治療室で働いていたとき、こう相談されたことがありました。

「ネットで、放射線は一生に1回だけって書いてあって……。再発したら、どうしようって不安で」

「一生に1回」と書かれていたら、
「今ここで使ったら、次はない」と受け取ってしまいますよね。

でも、この言葉だけでは、正確な意味が伝わりません。

この記事では、「放射線治療は一生に1回」という言葉の本当の意味と、
再発したときにどうなるのかを、できるだけ分かりやすくお話しします。

ここに書くのは一般的な話です。実際に再照射ができるかどうかは、前回の照射範囲や線量、周囲の臓器、前回からの時間、現在の病状や全身状態など、多くの条件によって変わります。ご自分の場合については、必ず治療を受けている病院で確認してください。

「一生に1回」ではなく、前回の照射範囲との重なりが問題になる

まず、いちばん大事なところからお話しします。

放射線治療は、体のどこであっても一生に1回しか受けられない、という治療ではありません。

もう一度放射線治療ができるかを考えるときに大切なのは、
今回の照射範囲が前回の範囲とどのくらい重なるか、
その周りの正常な臓器が過去にどのくらいの放射線を受けているか、という点です。

放射線治療では、がんに必要な線量を届けながら、
周囲の正常な組織に当たる量をできるだけ抑えるように、治療計画を立てます。

それでも、正常な組織にも一定の放射線が当たります。

そのため、以前に放射線が当たった範囲へもう一度治療するときは、
前回と今回を合わせた正常な組織への負担が大きくなりすぎないかを
慎重に検討する必要があります。

これが、「放射線治療は一生に1回」と言われることがある理由です。

ただし、正確には「一度受けたら、絶対に二度とできない」という意味ではありません。

前回の照射範囲と大きく重ならない場所なら、あらためて検討できる

前に放射線治療を受けていても、
次に治療する場所が前回の照射範囲と大きく重ならない場合は、
放射線治療の対象として、あらためて検討されます。

たとえば、最初に治療した場所とは離れたところに、新しくがんが見つかった場合です。

ただし、「別の臓器だから必ずできる」とは限りません。
場所の名前が違っていても、照射範囲や、
周囲の正常な臓器に当たる放射線が重なることがあるからです。

そのため、医師は前回の治療計画や線量の分布を確認し、今回の治療が可能かを判断します。

過去に放射線治療を受けたことがあるからといって、
もう二度と放射線治療ができないわけではありません。

同じ照射範囲でも、再照射を検討できることがある

前回の照射範囲と重なる場所であっても、
条件によっては、もう一度放射線治療を行う「再照射」が検討されることがあります。

再照射ができるかどうかは、次のようなことを総合して判断します。

  • 前回に放射線を当てた範囲と線量
  • 今回の照射範囲と、前回との重なり
  • 周囲の正常な臓器が受ける合計の線量
  • 前回からどのくらい時間が経っているか
  • これまでに出た副作用
  • 現在の病状や全身状態
  • 再照射によって期待できる効果と、起こり得る副作用
  • 使用できる放射線治療の方法

たとえば、症状をやわらげることを目的とした照射や、
高い精度で必要な場所に放射線を集中させ、
周囲の正常な組織への線量を抑えられる場合などに、再照射が検討されることがあります。

前回から時間がたっていることも判断材料の一つですが、
「何年たてばできる」という一律の基準があるわけではありません。

もちろん、誰でも必ず再照射できるわけではありません。
前回と今回の治療による効果と副作用の可能性を比べながら、
放射線治療の専門医が慎重に判断します。

高精度な放射線治療の進歩によって、再照射が検討される場面は増えています。
ただし、以前に放射線治療を受けた方なら誰でも安全に受けられる治療になった、
という意味ではありません。

過去に放射線治療を受けたことは、必ず伝える

再照射ができるかどうかを判断するために、とても大切なことがあります。

過去に放射線治療を受けたことを、必ず医療者に伝えることです。

医師は、以前の治療でどの範囲にどのくらいの放射線が当たったのかを確認し、
今回の治療と重なる部分があるか、正常な臓器への負担が大きくなりすぎないかを検討します。

最初の治療を受けた病院と、今かかっている病院が違う場合は、特に大切です。
新しくかかる医師は、以前の詳しい治療計画や線量の分布まで、
自動的に確認できるわけではありません。

手元に残しておくとよいのは、次のような情報です。

  • 放射線治療を受けた病院
  • 治療した時期
  • 治療した部位
  • 放射線を当てた回数
  • 分かれば、1回の線量や総線量

治療終了時に説明書や治療のまとめを受け取った場合は、一緒に保管しておいてください。
お薬手帳のように、今後の治療を考えるときに役立つ、あなたの体の大切な記録になります。

(放射線を受けたことを伝えるのは、歯の治療のときにも大切です。くわしくはこちらの記事でまとめています。)
放射線治療の前に「歯を診てもらって」と言われるのはなぜ?

詳しい線量や治療内容を覚えていなくても、ご自分を責める必要はありません。
手元に記録がない場合は、まず今かかっている医師に過去の放射線治療について伝え、
以前の病院の記録が必要か相談してください。

だから、「もう治療できない」と自分で決めなくていい

ここまでをまとめます。

「放射線治療は一生に1回」という言葉は、体全体で1回しか受けられない、
という意味ではありません。

  • 前回の照射範囲と大きく重ならない場所なら、放射線治療の対象としてあらためて検討される
  • 前回の照射範囲と重なる場合は、正常な臓器が受ける合計の線量などを慎重に確認する
  • 同じ照射範囲でも、条件によっては再照射が検討されることがある

大切なのは、「同じ場所か、別の場所か」だけで決まるのではなく、
前回の治療内容と今回の状態を合わせて判断される、ということです。

ネットで「一生に1回」という一文を見ても、
「もし再発したら、もう放射線治療はできない」と自分で決める必要はありません。

その時点の病状やこれまでの治療内容を確認し、放射線治療だけでなく、
手術や薬物療法なども含めて、どの治療が適しているかが検討されます。

「再発したら」という不安を抱く方は少なくない

「再発したらどうしよう」という不安は、治療前から治療後まで、多くの方が抱くものです。

7,885人のがん体験者が参加した2003年の全国調査では、半数以上の方がこころに関する悩みを抱え、不安のなかでは「再発・転移への不安」が最も多かったと報告されています。

また、この不安は、病状や治療内容に関係なく抱いている方が多いことも分かっています。

忘れようとしても、ふとした瞬間に頭に浮かぶことがあります。
だからといって、「気にしすぎだ」と自分を責める必要はありません。

大切なのは、「もう治療できない」といった思い込みによって、
不安を必要以上に大きくしないことです。

不安になったら、こう聞いてみる

「再発」という言葉を口にするのは、こわいことだと思います。

まだ起きてもいないことを聞いていいのかな、と思うかもしれません。
でも、これは確認してよいことです。

たとえば、放射線治療の診察で、こんなふうに聞いてみてください。

「今回の治療を受けると、将来ほかの場所への放射線治療にも影響しますか」

「もし同じ場所にもう一度治療が必要になった場合、再照射を検討できることはありますか」

「治療が終わったら、どんな記録を残しておけばいいですか」

こうした質問は、治療に後ろ向きなのではありません。

自分が受ける治療を、きちんと理解するための質問です。

医師に直接聞きにくい場合は、看護師に「次の診察で確認したい」と伝えたり、
がん相談支援センターに相談したりする方法もあります。

診察で聞きたいことを整理したい方は、
がん治療の診察前メモ」「診察で聞きたいことが聞けない」も参考にしてください。

今できることは、治療について確認し、記録を残すこと

放射線治療を一度受けたことだけで、
将来の放射線治療の可能性がすべてなくなるわけではありません。

次に治療が必要になったときは、前回の治療記録と、その時点の病状や体の状態をもとに、
あらためて判断されます。

今の時点でできるのは、今回の治療について分からないことを尋ね、
治療後に記録を残しておくことです。

「一生に1回」という言葉だけを見て、将来の治療の可能性まで自分で閉じなくていいのです。

この記事の内容について

この記事は、放射線治療を受けたあとに、再び放射線治療を行うことについて、一般的な情報をまとめたものです。再照射ができるかどうかは、前回と今回の照射範囲の重なり、正常な臓器が受ける合計の線量、前回からの時間、これまでに出た副作用、現在の病状や全身状態、治療の目的などによって異なります。この記事だけで、個別の診断や治療の可否を判断することはできません。ご自分の治療については、治療を受けている病院の医師にご確認ください。

参考情報

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