頭への放射線治療で、髪はどのくらい抜ける?

頭部への放射線治療にともなう脱毛の範囲・時期・準備を整理したコラムのアイキャッチ 治療中の副作用

「どのくらい抜けますか」

放射線治療室で、頭に放射線が当たる方から、よく聞かれた質問です。

抜けること自体は、もう説明を受けて、分かっている。
知りたいのは、そこじゃない。

どのくらい抜けるのか。

その先にあるのは、たぶん、こういうことだと思います。

帽子で隠せる範囲なのか。
仕事に行けるのか。
家族に、どんな顔をされるのか。
鏡を見て、自分が自分だと思えるのか。

髪が抜けることそのものより、髪が抜けた状態で人に会うことのほうが、心配。

そう考える方にたくさん出会ってきました。

ここに書くのは一般的な話です。抜ける範囲も、量も、治療の内容によって一人ひとり違います。ご自分の場合については、必ず治療を受けている病院で確認してください。

放射線が当たっている部分は、抜ける

私が患者さんに伝えていたのは、この一行でした。

「放射線が当たっている部分は、抜けてきます」

抗がん剤の脱毛とは、ここが大きく違います。

薬は血液に乗って全身をめぐるので、髪も、眉毛も、まつ毛も、全身の毛に影響することがあります。

でも放射線は、当てたところにしか作用しません。

だから脱毛も、放射線が当たった範囲だけに起こります。

頭の一部分だけに照射した場合は、円形脱毛のように、部分的に抜けることがあります。
頭全体に照射した場合は、全体的に抜けていきます。

つまり——

「どこに、どのくらい当たるか」が分かれば、「どこが、どのくらい抜けるか」の見当がつきます。

これは、けっこう大事なことだと思っています。

自分の頭のどこに放射線が当たっているのかを知っているかどうかで、鏡の前に立ったときの気持ちが変わるからです。

「なんで、ここだけ」ではなく、「ここに当たっているから、ここが抜けている」に変わる。

理解するということは、こわさを少しだけ小さくします。

「どのくらい?」に答えることの難しさ

正直に書きます。

「放射線が当たっている部分は、抜けてきます」——ここまでは、はっきり言えました。

でも、その先。

「私の場合は、どのくらいですか」

これには、答えられませんでした。

抜け方の程度は、放射線の強さ、当てる方向、当たる範囲、
そしてその方の体の状態によって変わります。

同じ「頭への照射」でも、人によってまったく違うのです。

だから、目の前の方に「あなたの場合はこのくらいです」とは言えなかった。

でも、これは看護師が知識不足だという話ではありません。

答えを知っているのは、あなたの治療計画を立てた医師、なのです。

ネットで調べても出てきません。
私にも言えません。
あなたの頭のどこに、どのくらいの量が当たるのかを知っているのは、
あなたの治療を計画した医師です。

そして、ここがいちばん伝えたいところ。

これは、聞いていい質問です。

聞いてくださる方も、少なくありませんでした。
でも同じくらい、聞けずに帰る方もいらっしゃったと思います。

「治療のことで頭がいっぱいなのに、髪の話なんて」

そう思って、飲み込んでしまう。

でも、髪のことは「そんなこと」ではありません。
生活そのものです。

治療の前に、予想される脱毛の程度を確認して、自分にできる準備をしておく。
公的な機関の資料にも、そう書かれています。

聞くことは、変なことでも、迷惑なことでもないのです。

いつから抜けはじめるのか

目安として、放射線治療を始めてから2〜3週間ごろから抜けはじめることが多いとされています。

10日ほどで始まる方もいます。

初日に抜けるわけではありません。

ここが、意外と知られていないところです。

治療が始まって数日、髪はまだ普通にある。
「意外と大丈夫かも」と思う。

そして2週間ほど経ったある朝、枕に髪がついている。
シャンプーのとき、指に絡む。

抜け方はじわじわと進み、治療の期間中がいちばん多く抜ける傾向があるとされています。

あらかじめどのように脱毛が経過していくのかを知っていた場合と、
知らなかった場合とでは、感じ方が違うと思うので
ぜひ知っておいてほしいと思います。

また、生えてくるのか

多くの場合、治療が終わって3〜6か月ほど経つと、生えてきたと実感できるとされています。

ただ、ここは正直に書きます。

放射線の量が多い場合には、生えてこなくなることもあります

国立がん研究センターのがん情報サービスには、具体的な線量の目安まで書かれています。
それを超える量が当たった部分では、毛が戻らないことがある、と。

読んで、心臓がぎゅっとした方もいらっしゃると思います。

でも、伏せません。

あとから知って「聞いていない」と感じるほうが、ずっとつらいからです。
そして、これを知っているかどうかで、準備の仕方が変わるからです。

自分の治療は、どのくらいの量なのか。
生えてくる見込みはあるのか。

これも、聞いてよい質問です。
というより、あなたにしか当てはまらない質問なので、あなたが聞くしかない質問です。

なお、脱毛を防ぐ有効な方法は、現在のところ見つかっていないとされています。

「これをすれば防げます」という情報を見かけたら、いったん立ち止まってください。
治療中の頭皮は敏感になっています。

良かれと思って何かを塗ったり使ったりすることが、かえって負担になることもあります。

生えてきた髪は、前と同じとは限らない

生えてきたとき、色や毛質、太さが変わっていることがあります。

くせが出た。細くなった。白いものが増えた。

これも、体に異変が起きたのではなく、起こりうる変化のひとつです。

元のような髪に戻るまで、時間がかかることもあります。

「生えてきた、よかった」で終わりではなく、
そこからまた、髪の毛と向き合う時間があるということです。

治療中の頭皮と、髪の扱い方

放射線が当たっている間、その部分の皮膚は敏感になり、傷つきやすくなっています。
【放射線治療の皮膚炎・肌ケア】の記事もぜひ参考にしてみてください。)

一度傷ができると、治りにくくなることもあります。

だから、頭を洗うときも、髪をとかすときも、地肌に触れない・こすらないが基本になります。

ここで、ひとつ大事なことを。

洗髪の方法は、病院によって指示が違います。

シャンプーを使ってよいと言われる場合もあれば、
治療中はぬるま湯で流すだけにしてくださいと言われる場合もあります。

使ってよいものを指定されることもあります。

ここは、ネットの情報より、あなたが治療を受けている病院の指示が優先です。

治療が始まる前に、確認しておいてください。

  • 頭は洗っていいですか
  • シャンプーは使えますか
  • どのくらいの力で洗っていいですか

こう聞けば、答えが返ってきます。

そして、もうひとつ。

「抜けるのがこわいから、とかさない」は、逆効果になることがあります。

とかさないでいると、髪がもつれて、からまります。
からまった髪をほどくときに、かえって強く引っぱることになり、地肌を傷つけてしまう。

とかさないのではなく、地肌に触れないように、静かにとかす

目の粗いものを使って、力を入れずに。
それだけでも違います。

抜けはじめる前に、できること

抜けてから慌てるより、抜ける前に少しだけ手を打っておくと、気持ちの余裕が違います。

  • 帽子やスカーフを、先に用意しておく。抜けてから探しに出るのは、気持ちの負担が大きくなります
  • ウィッグを考えるなら、髪があるうちに相談に行く。今の髪の色や量を見てもらえるので、選びやすくなります
  • 髪を短くしておくかどうかを、自分で決める。短いほうが抜けたときの衝撃が小さいと感じる方もいますし、最後まで今のままでいたいという方もいます。どちらが正しいということはありません
  • 枕にタオルを敷いておく。朝、抜けた髪をまとめて見る回数が減ります
  • 家族に先に伝えておくかどうかを決める。伝えておくと、抜けはじめたときに「どう見られるか」を気にしなくてよくなる方もいます

全部やる必要はありません。

自分が「これはやっておくと楽かも」と思うものを、ひとつかふたつ。
それで十分です。
【放射線治療が始まる前の準備】の記事も参考にしてみてください。

診察で、聞いておきたいこと

髪のことは、診察で聞いていい話題です。

遠慮しなくていいし、時間の無駄でもありません。

聞いておくと役に立つのは、この5つです。

  • 放射線が当たるのは、頭のどのあたりですか
  • その範囲は、どのくらい抜けそうですか
  • 抜けはじめるのは、だいたいいつごろですか
  • 治療が終わったあと、生えてくる見込みはありますか
  • 治療中、頭はどうやって洗えばいいですか

診察室に入ると、聞こうと思っていたことを忘れてしまう方は、本当に多いです。

書いて持っていってください。
【がん治療の診察前メモ】の記事もぜひ参考にしてみてください。

「どのくらい抜けますか」の、その先

この質問をした方は、髪の話をしているようで、実は生活の話をしています。

外に出られるのか。仕事を続けられるのか。人に会えるのか。

だから、軽い質問ではありません。

放射線が当たっている部分は、抜けてきます。

でも、どこに、どのくらい当たっているかは、人それぞれ違う。
そして、それを知っているのは、あなたの治療を計画した医師です。

聞いてみてください。

答えが分かれば、準備ができます。
準備ができていれば、抜けはじめた朝の枕を見たときにも、少しだけ、落ち着いていられます。

この記事の内容について

この記事は、頭部への放射線治療にともなう脱毛について、一般的な情報を整理したものです。抜ける範囲、量、時期、生えてくるかどうかは、治療の内容や一人ひとりの状態によって異なります。診断や治療の判断はしていません。ご自分の治療で何が起こるか、これからの見通しについては、必ず治療を受けている病院の医師にご確認ください。治療中に頭皮の痛みや強い赤み、傷などが出たときは、次の診察を待たずに相談して構いません。

参考情報

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