がん治療を受けている方のために、食べやすそうなものを考えて作ったのに、
ほとんど箸をつけてもらえなかった。
そんな日って、けっこう落ち込みますよね。
「何がいけなかったんだろう」
「美味しくなかったかな」
「何なら食べてくれるんだろう」
そんなふうに、自分の作り方を責めてしまうご家族は、少なくありません。
でも、先にお伝えしておきたいことがあります。
食べてもらえなかったのは、美味しくないとかあなたの工夫が足りなかったからではないんです。
この記事は、どんなによいものを作ったとしても食べてもらえないことがある、
作る側のあなたへの気持ちを中心に書いています。
食べてもらえないときはどうしたらよいのか、
こんなときは病院に相談していい、
という目安をお伝えしていきますね。
食べてもらえない日が続くと、つい自分を責めてしまう
放射線治療室や、がん患者さんの多い病棟で働いていたころ、
ご家族から
「頑張って作ってもなかなか食べてくれなくて」
という相談を受けることは、少なくありませんでした。
そのとき多くの方が口にされていたのが、「料理が口に合わないのかな」という言葉です。
献立を考えて、買い物に行って、体調を気づかいながら作る。
それだけでも、けっこうな手間が必要です。
なのに食べてもらえないと、その手間が報われなかったように感じて、落ち込んでしまう。
自然な気持ちだと思います。
ただ、ひとつだけ知っておいてほしいことがあります。
がんの治療中においては
食べられない日があることと、あなたの料理の良し悪しは、必ずしも関係していません。
食べられないのは、ご家族の工夫不足ではない
がん治療中に食べられなくなる理由は、ひとつではありません。
放射線治療や薬物療法の影響で、吐き気が出たり、口の中が荒れたり、味やにおいの感じ方が変わったりすることがあります。
だるさが強くて食べる元気が出ない日もあります。
がんそのものや、便秘、不安な気持ちが食欲に影響することもあります。
つまり、食べられない背景には、いくつもの要因が重なっていることが多いんです。
「この料理だから食べない」という単純な話ではないことが、ほとんどなのです。
だから、
味付けや見た目を工夫しても食べてもらえない日や、
昨日は食べれたのに今日同じものを出しても食べられない日があるのは、
あなたの工夫が足りないからではありません。
体の状態そのものが、今は食べられないということの方が圧倒的に多いです。
食欲が落ちる原因は人によって違いますし、
なかには相談したほうがいい理由が隠れていることもあります。
原因を自分で決めつけず、気になるときは医療者に伝えてみてください。
「ちゃんと食べて」と言ってしまう自分を、責めない
一生懸命作った料理を食べてほしくて、
つい「ちゃんと食べて」と言ってしまった。
あとで、言いすぎたかなと落ち込む。
これも、時々ご家族の方から相談をいただいた内容です。
食べてほしいと思うのは、責めたいからではなく、心配だからですよね。
少しでも体力をつけてほしい、元気になってほしい。
その気持ちから出た言葉です。
だから自分を責める必要はありません。
ただ、本人にとっては、その一言が少し重く感じる日もあります。
食べたくても食べられないときに「食べて」と言われると、
申し訳なさや焦りを感じてしまうことがあるからです。
もし次に声をかけるなら、「食べて」よりも、
「何なら食べられそう?」
「今は無理なら、あとででもいいよ」
に変えてみるのも一つです。
国立がん研究センターの情報でも、食べることを強く勧めることが、
かえって本人の負担になる場合があると説明されています。
最終的には、本人の「今は食べたい、食べたくない」という気持ちを大事にしていい、
ということですね。
ただし、何度も「食べる?」「これは?」と聞くことが、本人にとって負担になることもあります。
聞きすぎず、でも気にかけている、くらいの距離感で十分です。
食べてもらえないとき、家でできる小さなこと
食べる量が少ない日は、無理にいつもの一食分をそろえなくてかまいません。
必ず3食は食べないと!と思う必要もありません。
少なめに盛りつけたり、小さなおにぎりやゼリーのように、
ひと口で食べられるものを用意しておくと、「これくらいなら」と手が伸びることがあります。
食べられるときに、食べられる分だけ。
それが本人さんの気持ちを楽にすることもあります。
口の中が荒れていて食べにくそうなときや、何なら食べやすいかをもう少し具体的に知りたいときは、別の記事で食べやすいものの工夫をまとめています。あわせて読んでみてください。
→ 放射線治療の口内炎で食べられないとき|食べやすいものと相談の目安
ただし、こんなときは病院へ相談
先ほど「食べられないこと」を責めなくていい、とお伝えしました。
でも、体の安全のためには、これだけは分けて考えてください。
次のようなときは、次の診察を待たずに、治療を受けている病院へ連絡してください。
- 水分もほとんど取れていない
- 急に食事の量が大きく減った
- むせる、飲み込みにくいなど、飲み込みに不安がある
- 強い痛みや、息苦しさがある
- 尿の回数が減っている、ぐったりしている
食べる量が少ない日が続くときは、水分が取れている場合でも、一度病院に相談してかまいません。
すぐに大きな問題とは限りませんが、食べられない理由は、
痛み、吐き気、口の中の荒れ、飲み込みにくさ、便秘、薬の影響など、人によって違います。
自己判断で様子を見続けるより、「このくらいでも相談していい」と考えて大丈夫です。
ただ、これは自己判断するところではないので、迷ったときはぜひ病院に確認してください。
「これくらいで連絡していいのかな」と思わなくて大丈夫です。
相談するときは、次のことを伝えると、状況が伝わりやすくなります。
- いつから食べにくいか
- どんなものなら食べられているか
- 水分はどのくらい取れているか
- 体重が減っていないか
- 日常生活にどのくらい影響しているか
ぜひ、メモして持っていってください。
短い診察時間でも伝えやすくなります。
ひとりで、作り続けなくていい
最後に、作る側のあなた自身のことも書かせてください。
毎食、体調を気づかいながら考えて作って、食べてもらえないと落ち込んで。
それを毎日続けるのは、誰でもしんどいです。
食べてもらえないということに対して
あなたが悪いと思う必要は決してありません。
作る人が疲れきってしまわないことも、本人を支えるのと同じくらい大事なことです。
そして、あなたには、あなた自身の食事や休息を守る権利があります。
本人のためだけでなく、あなたのためにも、休むことも考えてみてください。
食事の準備や家事を全部ひとりで抱えなくてもいいように、頼れる方法を別の記事でまとめています。負担が重いと感じるときは、こちらも見てみてください。
→ がん治療を支えるご家族へ|食事・掃除・買い物を抱え込まないために
おわりに
食べてもらえなかった日は、つい「自分のせいかな」と思ってしまいます。
でも、ここまで読んでくださったあなたは、もう十分、相手のことを考えて動いています。
努力が足りなかったわけではありません。
食べられない体の状態が、今はそうさせているだけのことがほとんどです。
うまくいかない日があっても、責めなくていいんです。
気になることがあれば、ひとりで抱えず、病院に相談してみてくださいね。
※この記事は、がん治療を受ける方を支えるご家族に向けた一般的な情報です。診断や治療方針を示すものではありません。症状や対応については、自己判断せず、治療を受けている医療機関や担当の医療者にご相談ください。
参考にした主な情報
- 国立がん研究センター がん情報サービス「家族が治療を始めてから」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「家族ががんになったとき」

