放射線治療が始まる前の準備|服装・持ち物・生活の確認ポイント

放射線治療が始まる前に、服装・持ち物・生活で確認しておきたいポイントを解説する記事のアイキャッチ画像 放射線治療

放射線治療が始まる前、

「何を準備して行けばいいんだろう」
「服装はいつも通りでいいのかな」
「治療中の生活で、気をつけることはあるのかな」

そんなふうに不安になっている方は、とても多いです。

放射線治療は、手術や抗がん剤治療に比べて、どんなことをするのか想像がつきにくいと言われます。だから治療が始まる前は、ご本人もご家族も「何が分からないのかも分からない」という状態になりやすいんです。

私が放射線治療に関わっていた頃も、治療開始前の方から「普通に生活していていいですか?」「服は何を着て行けばいいですか?」「皮膚についた印はお風呂で落として大丈夫ですか?」など、いろいろな相談を受けました。

この記事では、放射線治療が始まる前に確認しておくと安心なことを、元放射線治療室の看護師の視点でまとめます。全部を完璧に準備しようとしなくて大丈夫です。気になるところから、一つずつ見てみてください。

この記事でまとめていること

  • 放射線治療前に確認しておきたいこと
  • 治療の日の服装と持ち物
  • 皮膚の印がついたときの注意点
  • 食事や口の中の変化があるときの相談目安
  • だるさに備えた生活の整え方
  • 家族ができる準備

放射線治療の前は、不安があって当然

放射線治療は、毎日のように通院することが多い治療です。

通院で受けられる分、入院より体は楽だという方もいますが、
1回の治療時間は短くても、通院・待ち時間・着替え・体調の変化・家のこと・仕事の調整など、考えることはむしろ増えます。

治療を受けると決まった時点で、最初から全部を分かっている人はほとんどいません。

「こんなこと聞いていいのかな」
「説明されたけど、家に帰ったら忘れてしまった」
「家族として何を準備したらいいのか分からない」

——そう感じるのは自然なことです。

大事なのは、特別なものをたくさんそろえることではなく、生活の見通しを少しだけ立てておくこと。

まずは次のあたりを確認しておくと、落ち着いて治療に入れます。

治療前に確認しておきたいこと

  • 治療は何回くらい、どのくらいの期間あるか
  • 何曜日に、1回どのくらい時間がかかりそうか
  • 治療前後に診察がある日はいつか
  • 途中で体調が悪くなったとき、どこに連絡するか
  • 家族が付き添った方がよい日はあるか

特に送迎や付き添いをするご家族は、治療回数だけでなく、待ち時間や移動時間も含めて考えておくと安心です。

「治療時間は短い」と聞いていても、着替え・待ち時間・会計・移動で、思ったより時間がかかることがよくあります。

分からないことは、放射線治療のスタッフに聞いて大丈夫です。

服装は「脱ぎ着しやすさ」と「当たって痛くならないか」で選ぶ

治療時の服装は、照射する部位によって変わります。
胸・お腹・骨盤・首まわりなど、部位によっては着替えが必要なこともあります。

基本は、脱ぎ着しやすく、締めつけの少ない服が安心です。

ここで、説明書きにはあまり書かれていないけれど、知っておくと後から楽なことがあります。

  • 治療が進むと、照射した部分の皮膚が敏感になってきます。すると、ふだんは気にならない下着のゴムやホック、ワイヤーの位置が当たって、ピリピリ感じる方もいます。前開きで、金具やワイヤーの少ないものにしておくと、後半になって楽です。
  • 毎日の「着替えそのもの」が、地味に負担になることもあります。体力が落ちてくる治療後半ほど、ボタンの多い服や、頭からかぶる服がしんどく感じる方もいます。
  • 部位や装置によっては、アクセサリーや金属のついた服を外すよう案内されることがあります。これは事前にスタッフへ確認しておくと良いでしょう。

治療開始前から、わざわざ新しい服を買う必要はありません。
手持ちの中から「これなら楽に着られそう」というものをいくつか選んでおけば十分です。

服装で迷ったときの考え方

「病院に行く(外に出る)んだから服はおしゃれにしなきゃ」と考える方もいらっしゃいますが、
おしゃれよりも脱ぎ着しやすい・締めつけが少ない・こすれにくい・通院で疲れにくい、を優先に。
迷うときは、治療する部位に合わせて看護師やスタッフに確認してくださいね。

持ち物は「毎日の通院を楽にする」視点で

必要な持ち物は病院によって違うので、まずは病院から指定されたものを優先してください。保険証やお薬手帳など基本的なものは、これまでの通院と同じです。

そのうえで、放射線治療ならではのコツがあります。毎日のように通うからこそ、「通院セット」を一つ決めてしまうこと。そのバッグさえ持てば大丈夫、という形にしておくと、朝の準備がぐっと楽になります。

通院セットに入れておくと便利なもの

  • 診察券、保険証やマイナンバーカード、お薬手帳
  • 病院から渡された書類、診察前メモ
  • 羽織れるもの(治療室や待合は、思ったより寒いことがあります)
  • 待ち時間に見るもの、飲み物
  • 皮膚に塗る薬を使い始めたら、その薬

診察で聞きたいことを忘れそうな方は、こちらも参考にしてください。
がん治療の診察前メモ|聞きたいことを忘れないための準備

皮膚についた印は、自分で消さない

放射線治療では、毎回同じ位置に正確に放射線を当てるために、
体や固定具に印をつけることがあります。

お風呂に入ったとき、

「お風呂で消えても、明日また書いてもらえばいいよね、ゴシゴシ」
「汚れて見えるから洗いたい」
「家族に見られるのが少し気になる」

そう感じる方もいます。
気持ちは、すごく分かります。

でも、この印は計画どおりに放射線が当たるようにつけられた、大切な目印です。

自分で強くこすったり、消そうとしたりしないでください。
薄くなったり消えかけたときも、自分で書き足さず、病院で確認してもらいましょう。

印について覚えておきたい4つ

  • 強くこすらない
  • 自分で消そうとしない
  • 薄くなっても、自分で書き足さない
  • 気になるときは、病院で確認する

照射した部分の皮膚は、治療が進むと乾燥したり、赤みやかゆみが出たりすることがあります。
洗うときはゴシゴシせず、やさしく。
タオルも、こするより軽く押さえるように。

皮膚に対して保湿剤を使ってよいか、いつ塗るのがよいかは、病院の方針や部位によって違うので、
自己判断で新しいものを塗る前に医師や看護師へ確認してください。

皮膚の赤み・かゆみ・洗い方が気になる方は、こちらでも詳しくまとめています。
放射線治療の皮膚炎・肌ケア

気になる症状、いつ相談する?

放射線治療は、当てる部位によって出やすい症状が違います。

首や口、のど、食道の近くに当たる場合は、口の中やのどに症状が出ることがあります(口の中やのどの痛み、飲み込みにくさ、味が分かりにくい、口の乾き、食事量が減る、など)。

治療前から怖がりすぎる必要はありません。
ただ、こうした症状が出たときに「次の診察まで我慢しよう」と抱え込まないことが大切です。

次の診察を待たずに相談したい状態

  • 水分が取りにくい
  • 痛みで食べられない
  • むせる
  • 急に食事量が減った
  • 体重が大きく減ってきた
  • 薬を使ってもつらい
  • 強い痛みがある
  • 息苦しさや、急な体調変化がある

食べられないのは、気合いや努力の問題ではありません。治療の影響や体調の変化で、昨日食べられたものが今日はつらい、ということも本当にあります。「これくらいで聞いていいのかな」と思わなくて大丈夫です。生活に困っているなら、それが相談していいサインです。

口内炎や食べにくさが気になる方は、こちらでも詳しくまとめています。
放射線治療の口内炎で食べられない|食べやすいものと相談の目安

だるさに備えて、予定を詰め込みすぎない

放射線治療中は、部位や体調によって、だるさを感じる方もいます。
「治療時間は短いのに、どうしてこんなに疲れるんだろう」と不安になる方も少なくありません。

私が現場で見てきた中でも、治療そのものだけでなく、
毎日の通院・待ち時間・仕事や家事との両立で、疲れが少しずつ重なっていく方がいらっしゃいました。

だるさが出るかどうか、どのくらい続くかは人それぞれです。

だからこそ、治療前から予定を詰め込みすぎず、「疲れたら休める余白」を作っておくことが大切です。

だるさに備えてしておくと安心なこと

  • 通院後に休める時間を作っておく
  • 家事を全部その日にやろうとしない
  • 買い物や料理を、少し簡単にする
  • 家族と役割分担を話しておく
  • 体調が悪いときの連絡先を確認しておく

治療中や治療後のだるさが気になる方は、こちら。放射線治療後のだるさがつらい方へ
支えるご家族の視点は、こちら。放射線治療を受ける方のだるさを支えるご家族へ

診察前に「メモ」を準備しておく

治療が始まる前は何を聞いて良いかもよく分からないと感じていた方も、
治療が始まると診察や説明の場面で聞きたいことがたくさん出てきます。

でも、いざ診察室に入ると、聞きたいことを忘れてしまう方は少なくありません。

これは、本当によくあることです。
緊張もありますし、先生の説明を聞くだけで精一杯になることもあります。

だから、聞きたいことは予めメモして持って行くのがおすすめです。

メモしておくとよいこと(例)

  • 治療は何回あるか、途中で休むことはあるか
  • 仕事や家事は、どのくらいしてよいか
  • 皮膚に出た症状は、どこまで様子を見てよいか
  • 食べられないときは、いつ相談するか
  • だるさが強いときは、どうしたらよいか
  • 家族が連絡してもよいか、緊急時の連絡先はどこか

うまく質問しようとしなくて大丈夫です。
気になることを箇条書きにするだけで十分。
病院側も、何に困っているか分かると、説明や対応がしやすくなります。

ご家族は、全部を背負わなくて大丈夫

ご家族は、治療が始まる前に

「何をしてあげたらいいんだろう」
「ちゃんと支えられるかな」
「つらくなったとき、どう声をかければいいのかな」

と心配になることがあると思います。
心配になりますよね。

でも、ご家族が最初から全部を背負う必要はありません。

本人さんが自分でできることは残しながら、困った時に一緒に整理する。
それだけでも十分支えになります。

家族ができる準備の例

  • 通院時間を一緒に確認する
  • 持ち物を一緒にチェックする
  • 聞きたいことをメモするのを手伝う
  • 食事や家事を、一人で抱え込まないように話しておく
  • 体調が悪いときの連絡先を共有しておく

本人も家族も、治療前から完璧を目指す必要はありません。

分からないことが出てきたら、その都度確認すれば大丈夫です。

まとめ|完璧な準備より、「困ったら相談できる」準備を

放射線治療を始めるとなると、ほとんどの患者さんや家族の方は
服装・持ち物・皮膚の印・食事・だるさ・家族の関わり方と、気になることがいくつも出てきます。
でも、最初から全部を完璧にしようとしなくて大丈夫です。
まずは、ここからで十分です。

まずここだけ確認しましょう

  • 通院の流れを確認する
  • 脱ぎ着しやすい服を選ぶ
  • 通院セットを一つ決める
  • 皮膚の印はこすらない
  • 食べられない、水分が取れないときは相談する
  • だるさに備えて予定を詰め込みすぎない
  • 診察前にメモを作る
  • 家族だけで抱え込まない


放射線治療は、病院に通いながら、生活を続けていく治療でもあります。
だからこそ、完璧にそろえることより、困ったときにすぐ相談できる状態にしておくことが、いちばんの準備になります。
気になること、生活で困っていることは、我慢せず医療者に相談してみてくださいね。

参考情報

この記事を書くにあたり、以下の公的機関・医療機関の情報を参考にしました。

・国立がん研究センター東病院「放射線治療 X線治療」

・国立がん研究センター中央病院「放射線治療中のスキンケア」

・国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療」

免責・注意書き

この記事は、がん治療を受ける方とご家族に向けて、放射線治療前に確認しておきたい一般的な準備をまとめたものです。実際の治療内容、通院回数、注意点、副作用の出方は、がんの種類、治療する部位、治療方法、体調、病院の方針によって異なります。症状が強い場合、水分が取れない場合、急に食事量が減った場合、強い痛みや息苦しさなどがある場合は、次の診察日を待たず、治療を受けている医療機関へ連絡してください。この記事だけで判断せず、具体的な治療やケアについては、担当医、看護師、薬剤師、管理栄養士などの医療者に確認してください。

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