放射線治療中に地震が起きたら、放射線はどうなるの?

放射線治療中に地震が起きたときの照射中断と安全確認について解説する記事のアイキャッチ 放射線治療

治療台にひとりで横になって、機械が動きはじめる。
ちょうどそのとき、大きく揺れたら——。

「体がずれたまま、放射線が当たり続けるの?」
「スタッフは、気づいてくれるのかな」
「途中で止まったら、その日の治療はどうなるの?」

大きな地震をニュースでみて、もしも治療室でこうなったら、、、

治療を思い出して、不安になった方もいると思います。

今日は、放射線治療中に地震が起きたら放射線はどうなるのか、
途中で止まった治療はどうなるのかを、できるだけかみくだいてまとめていきます。

(ここでお話しするのは、体の外から放射線を当てる「外部照射」です。装置の種類や災害時の手順は、病院によって違います。実際の対応は、通っている病院で確認してくださいね。)

放射線を「止める」仕組みがある

いちばん心配なのは、
「揺れているあいだも、ずっと放射線が出続けるのでは」ということだと思います。

放射線を出す機械は、
外の操作室から放射線を途中で止めることができます。

治療台と機械の本体には、緊急で止めるためのボタンもついています。

だから、揺れを感じたときは、すぐにスタッフが放射線を止めることができます。

全ての病院ではありませんが地震を感じ取って自動で止まる装置を入れている病院もあります。

一貫しているのどの病院でも大きく揺れた場合は、治療を予定どおり続けることはまずなく

一度治療を止めて
機械の状態や揺れの大きさ、周りの状況を見ながら、
その日の治療をお休みにしたり、あるいは続けるなどの判断がされていくことになります。

治療室にひとりでも、必ず見ている

照射のあいだ、あなたは治療室にひとりで横になります。

ひとりぼっちだと感じるかもしれませんが、
治療室スタッフは、すぐ隣の部屋(操作室)に移って
常にあなたの様子をモニターや音を通じて見ています。

なので、何かあれば、すぐに放射線を止めて対応することができます。

治療室にひとりでも、スタッフは必ず見ています。

ただ、大きな揺れの真っ最中に、スタッフがすぐ治療室へ入れると断言はできません。

スタッフ自身の安全や、機械の状態、そこまでの通り道の安全を確認する必要があるからです。

それでも、ふだんから様子を見て、異常があればすぐに放射線を止める、
という体制で見ていますので「ひとりだ」と不安に思う必要はありません。

途中で止まっても、体に放射線は残らない

「途中で止まったら、中途半端に放射線が体に残るのでは」

そう心配になるかもしれません。

外から当てる放射線は、機械から放射線が出ているあいだだけ、体に当たり抜けていきます。
機械が照射をやめたら、そこで放射線も止まり抜けていきます。

外から当てた放射線が、体の中にたまったり、
たまった放射線が治療のあと体から出続けたりすることはありません。

だから、もしも地震で途中で止まった場合、放射線が体に残るということはないです。

途中で止まった治療は、どうなるの?

途中で止まったとき、その日の残りの放射線治療はどうなるのでしょう。

スタッフが「だいたいこのくらい当たったかな、じゃ、残りはこのくらいでいっか」と、
勘で治療を再開するわけではありません。

機械には、どこまでどれだけ照射したかがきちんと記録されます。
その記録や治療の計画を見て、再開を検討していきます。

検討するうえで、

  • 安全を確認して、同じ日に続きをする
  • その日はお休みにして、別の日に調整する
  • 機械や病院の状態が落ち着いてから、日程全体を見直す
  • 他院との調整

といったことが考えられます。

どうなるかは、機械や病院の状況、あなたの状態によって変わっていきます。

一度止まったからといって、それまでの治療が無駄になるということはありません。

続きをどうするかは、治療室スタッフが、記録と計画、さまざまな状況を見て決めてくれます。

揺れが収まっても、すぐ再開しないことがある

大きく揺れたあと、まず確かめられるのは、あなたとスタッフの安全です。

けがはないか。気分は悪くないか。
体を支える固定具や治療台に、ずれや壊れた部分はないか。
部屋に、落ちてきた物や危ないところはないか。

そのあとで、機械をまた使えるかを確認します。

放射線治療は、当てる位置や放射線の量を、細かく合わせて行う治療です。

見た目には壊れていなくても、
機械の点検をして安全が確保された上で再開することになります。

その点検が終わるまで、治療がお休みになることもあります。

お休みになることで焦りを感じる方もいるかもしれません。

しかし、
「止めた」「すぐ再開しない」が治療自体の中止に直結しているわけではないです。

治療が止まっているのは、安全を優先しているからです。

もし治療台の上で揺れたら

治療台は、思っているよりも高い位置にあり、幅もそれほど広くありません。
頭や体を固定具で支えていることもあります。

だから、驚いて自分だけで飛び降りようとすると、落ちたり、
機械や固定具に体をぶつけたりして、かえって危ないことがあります。

まずは、こうしてください。

  • あわてて治療台から飛び降りない
  • 自分で機械を動かそうとしない
  • 固定具を、無理に外そうとしない
  • マイクから聞こえるスタッフの声を聞く
  • 声を出せるときは「揺れています」「怖いです」と伝えていい

固定具やマスクをつけていて、自分では動きにくいこともあります。
スタッフが外しに来ますから、あせって自分で外そうとしないでください。

基本は、自分だけで急に動かず、スタッフを待つこと。

通っている病院で、地震のときの合図や動き方を案内されていたら、それを優先してください。

治療が1日お休みになっても、1からやり直しとはならない

地震のあと、病院や機会の点検などで、その日の放射線治療がお休みになることもあります。

「お休み」と聞くと、

「1日空いたら、効果がなくなるの?」
「また最初からやり直しなのかな?」

と心配になりますよね。

日本放射線腫瘍学会は、

治療の期間の中で数日くらいお休みが入っても、
ふつうは治療の効果に大きな差は出ないと考えられる、と患者さん向けの説明で伝えています。

もちろん、がんの種類や治療の内容、お休みする日数によって、効果の考え方は変わります。

でも、「1回休んだら、全部が無駄になる」「必ず最初からやり直し」ということではありません。

自分の判断で休んだり、治療をやめたりしないでください。
病院が案内する、次の治療日を確認しましょう。

電話がつながりにくいときは、病院の公式サイトや、
案内されている連絡方法を確認してみてください。

必要な調整は、あなたが治療を受けている病院の放射線治療チームが、
あなたの状態や治療の状況、機会の状況などを見て決めてくれるはずです。

病院は、災害のときの備えもしている

多くの病院では、地震などの災害が起きたときに、患者さんと職員の安全をどう守るか、
あらかじめ決めています。

いざというときのために、訓練をしている病院がほとんどです。

私も、放射線治療室で働いていたころ、災害を想定した訓練が毎年ありました。

患者さんの安全をどう確かめるか。
治療室から、どうやって誘導するか。
誰が、どの役割をして、どこに連絡するか。

実際の地震では、訓練どおりにいかないこともあります。
それでも、「起きてから考える」のではなく、起きる前から動きを確かめておく。

それが、患者さんの安全につながります。

ひとつだけでも確認しておく

放射線治療を受けるうえで、災害のときの対応をあなたが全部知っておく必要はありません。

次に治療へ行ったとき、治療室スタッフに、こう聞いてみてください。

  • 「治療中に地震が来たら、どんな声かけがありますか?」
  • 「揺れたとき、私はまずどうすればいいですか?」
  • 「もし地震がきたら治療はどうなるの?」

このうち、
ひとつだけでも確認しておく。そのひとつが安心につながります。

最後に

放射線治療中に地震が起きたとき、

  • どの機械も自動で止まる、とまでは言えないが、放射線を止める仕組みがある
  • 治療室にはひとりでも、外で常にスタッフが見守っている
  • 機械が途中で止まっても、体に放射線は残らない
  • 治療が中断されたときは、あなたと機械と機械にある記録を確かめてから、続きを考える

——こういう流れがあります。

「絶対に大丈夫」「絶対」とは言い切れません。
でも、地震のときどうするべきか、対策はあります。

放射線を止めて、あなた、機械と記録、周囲の状況を確かめて、続きをどうするかチームで決める。
常に安全を確保した上で進めていくことになります。

地震について不安に感じている方は
次に治療台に上がる前に、「もしも地震が起きたときは、どんな合図がありますか」と聞いておく。

通っている病院のやり方を知っておくことが、今できる、いちばん具体的な備えになります。

不安なことは、ひとりで抱えず、治療を受けている病院のスタッフにそのまま伝えてくださいね。


※この記事は、体の外から放射線を当てる外部照射について、一般的な情報を整理したものです。機械の止め方、災害のときの声かけ、避難、点検、治療の再開の判断は、施設・装置・治療の方法・災害の状況によって異なります。この記事だけで緊急時の行動や治療の日程を判断せず、実際には病院の案内と、その場のスタッフの指示を優先してください。

参考情報

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