放射線治療で口やのどが渇くとき|つらさをやわらげる工夫

放射線治療による口の渇きに寄り添うコラムのアイキャッチ 治療中の副作用

頭頸部(口やのどのあたり)の放射線治療を受けていて、こんなことはありませんか。

口の中が、いつも渇いている。
ネバネバして、話しづらい。
食事のとき、飲み込みにくくて時間がかかる。
夜中に、口の渇きで目が覚める。
水を飲んでも、すぐにまた渇いてくる。

これは、口やのどに放射線が当たる治療を受ける方に、よく起こる変化です。

放射線治療室にいた頃にも、
「とにかく口が渇いてつらい」
と話される方は、少なくありませんでした。

今日は、この口の渇きについて、なぜ起きるのか、家でできる工夫、
そして相談したほうがいい目安を、順番に整理します。

なぜ、口やのどが渇くのか

口の中には、唾液をつくる「唾液腺」があります。
耳の下や、あごの下などにあって、いつも少しずつ唾液を出しています。

頭頸部の放射線治療では、がんに放射線を当てるときに、
この唾液腺の近くにも放射線がかかることがあります。

すると、唾液の量が減って、口の中が渇きやすくなります。

人によっては、治療の始めのころに、耳の下あたり(耳下腺という唾液腺があります)が腫れて、
痛みを感じることもあります。

これも、唾液腺が放射線の影響を受けて起こることがあるものです。

症状が出始めるのは、治療が始まって2〜3週目ごろが多いです。

口が渇くだけでなく、口の中がネバネバする、うまく話せない、食べ物が飲み込みづらい、
という感じ方をする方もいます。

渇きは、治療が進むにつれて強くなっていくことが多いです。

治療の後半が、いちばんつらい時期になりやすいので、
「だんだんきつくなってきた」と感じるのは気のせいではありません。

この渇きは、気持ちの問題ではなく、治療を受ける過程で起こるもの。
唾液そのものが減っているので、「気にしすぎ」でも「気のせい」でもないんです。

いつまで続くのか、という不安

「治療は終了しているのに、まだ症状が続いている」
「これは、ずっと続くんだろうか」
——ここが、いちばん不安なところだと思います。

正直にお伝えすると、口の渇きの戻り方には、かなり個人差があります。

治療が終わってから半年〜1年くらいで少しずつ楽になる方もいれば、年単位で時間がかかる方、
元の状態までは戻りきらない方もいます。

放射線が当たった範囲や量、もともとの体質によっても変わります。

不安にさせたくて、こう書くのではありません。
「すぐ治りますよ」と言われて、そうならなかったときのほ方が、あとでつらいからです。

症状とどう付き合っていくか、考えていくことも大切です。

いっぽうで、最近は、唾液腺をできるだけ避けて放射線を当てる技術(IMRTなど)
も使われるようになっています。

あなたの治療がどのくらい唾液腺に配慮したものかは、主治医が把握しています。
気になるときは、ぜひ聞いてみてください。

家でできる、口の渇きをやわらげる工夫

渇きを完全になくすのは難しくても、少し楽にする工夫はあります。
全部やろうとしなくて大丈夫です。

合いそうなものからひとつづつ試してみてください。

  • 水やお茶を、こまめに少しずつ口に含む(一気にたくさんより、少量を何度も)
  • 寝るときは、枕元に水を置いておく
  • 部屋が乾かないように、加湿器やぬれタオルで湿り気を保つ
  • うがいで口の中を潤す(うがい薬を使うなら、主治医や歯科ですすめられたものを)
  • 食事は、汁物・とろみ・やわらかめのものにして、飲み込みやすくする
  • 一口を小さくして、ゆっくり噛む
  • 熱すぎるもの、塩からいもの、香辛料の強いものは、しみることがあるので、様子を見ながら
  • お酒・コーヒー・たばこは、口の渇きを強めやすいので、量を控えめに

口の中が渇くと、汚れや細菌がたまりやすくなります。
うがいは、気づいたときにこまめに行うのがおすすめです
(1日に何回か、口の中全体をすすぐイメージで)。

アルコールの入った洗口液は、しみることがあるので、避けたほうが楽なことが多いです。

外出のときは、小さな水のボトルを持ち歩くと安心です。
人と長く話すと渇きやすいので、会話の合間に少し口を湿らせると、ずいぶん話しやすくなります。

とくに夜は、口が渇いて目が覚めやすい時期があります。
寝る前に口をゆすいでおく、部屋を加湿する、枕元に水を置いておく、といった小さな備えで、
夜中のつらさが少しやわらぐことがあります。

眠りが浅くなると日中の疲れにもつながるので、夜の渇き対策は、意外と大事です。

食事は、パサパサした食べ物(パン、焼き魚、ゆで卵など)が飲み込みにくく感じやすいです。

汁物やあんかけ、ヨーグルトやゼリー、やわらかく煮たものなど、
口の中でまとまりやすいものにすると、少し楽になります。

食べにくさそのものについては、食べやすいものの工夫を別の記事にまとめています。
あわせて読んでみてください。

虫歯を防ぐために、歯のケアを続ける

唾液には、口の中をきれいに保つはたらきがあります。
その唾液が減ると、虫歯になりやすくなったり、口の中が不潔になりやすくなったりします。

だからこそ、口やのどの放射線治療では、歯のケアがとても大切になります。

  • 治療が始まる前に、歯科を受診しておく(治療が必要な虫歯などは、先に相談を)
  • 治療中も、教わった方法で、やさしく口の中を清潔に保つ
  • 治療が終わったあとも、定期的に歯科でメンテナンスを受ける

ひとつだけ、気をつけてほしいことがあります。
放射線が当たったあとの歯の治療(とくに抜歯)は、慎重な判断が必要なことがあります。

放射線が当たった部分は、骨やあごの傷が治りにくくなることがあるためです。
怖がらせたいということではなく、知らずに歯を抜いてしまう前に、
ひと言相談してほしい、という意味です。

歯のことで気になる点は、自己判断で進めず、主治医と歯科に相談してください。

飲み込みにくさが強いとき、病院に相談する目安

口の渇きや飲み込みにくさは、多くの場合、症状に対し工夫をしながら経過を見ていくものです。
ただ、次のようなときは、我慢せず、治療を受けている病院に相談してください。

  • 水分もとりにくく、飲むとむせる
  • 食べられる量がぐっと減って、体重が落ちてきた
  • 痛みが強くて、食事がほとんどとれない
  • 口の中や唇に、痛み・白いもの・腫れなどの変化がある

相談するときは、いつごろからか・どのくらい食べ(飲め)ているか・何をするとつらいかを、
簡単にメモして伝えると、状況が伝わりやすくなります。

「これくらいで相談していいのかな」と思わなくて大丈夫です。

体重を、同じ条件(朝起きたあとなど)でときどき測っておくと、
「思ったより減っていた」に早めに気づけます。数字があると、診察でも伝わりやすくなります。

なお、味がわかりにくい、という変化も、頭頸部の治療では起こることがあります。
味覚については、別の記事で整理しています。

一人で我慢しなくて大丈夫

口の渇きは、見た目には分かりにくく、周りに説明しづらいつらさです。

「たかが口の渇き」と自分でも思ってしまいがちですが、
一日中続くと、食事も、会話も、想像以上に負担になります。

周りの人には、見た目で分かってもらいにくい分、
「今日は口が渇いて話すのがしんどい」と、ひと言だけでも伝えておくと、
少し楽になることがあります。

つらさを一人で抱えず、治療室のスタッフや主治医に、そのまま話してみてください。
工夫でやわらげられる部分もありますし、必要なら、薬で対応できることもあります。

渇きと付き合いながらでも、少しでも楽に過ごせる時間が増えることを、願っています。


免責事項

この記事は、放射線治療を受ける方が抱えやすい口の渇きについての、一般的な情報です。診断や治療方針を示すものではありません。症状の原因や対処、薬・歯科の判断は、必ず主治医や、治療を受けている医療機関にご相談ください。

参考情報

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