放射線治療中にわき毛は剃っていい?|照射範囲の確認

乳房の放射線治療中に、わき毛を剃ってよいか迷う女性のイラスト 治療中の副作用

お風呂あがり、鏡の前で腕を上げる。

わき毛が、少し伸びてきている。

いつもならすぐに剃るところですが、ふと治療を思い出して手が止まります。

放射線治療中に、剃っていいんだろうか。
皮膚に何かあったら、治療に影響するんじゃないだろうか。

そもそも、脇にも放射線は当たっているんだろうか。

先にお伝えします。

照射範囲の外であれば、
むだ毛を処理してもかまわないとされています。
ただし、照射範囲やその近くの処理は、なるべく避けるよう案内されています。

つまり、答えは「剃っていい」でも「剃ってはいけない」でもありません。

自分の照射範囲がどこかによって変わります。

私は看護師として約15年、うち約5年間は放射線治療に関わる認定看護師として働いてきました。
放射線治療室では、こういう生活の中の小さな迷いを、たくさん聞いてきました。

この記事では、脇の処理をどう考えればいいか、電気シェーバーならいいのか、そして治療が終わったらいつから剃って良いのかを整理します。

まず確認したいのは「自分の脇が照射範囲かどうか」

乳房の治療でも、脇が範囲に入ることがある

乳房の放射線治療は、多くの場合、残した乳房や胸壁に照射します。

ただし、リンパ節への転移など、病状や手術の結果によっては、
脇の下(腋窩)や鎖骨周囲のリンパ節領域まで照射することがあります。

また、同じ乳房の治療でも、放射線の当たる範囲や当たり方は一人ひとり異なります。

脇が照射範囲に含まれるかどうかは、見た目だけでは判断できません。

「乳房の治療だから、脇は関係ない」とは言い切れません。

範囲は治療計画で決まっている

照射する範囲は、治療開始前に撮る計画CTをもとに、あらかじめ決められています。

基本となる照射範囲は、治療計画で決まっています。

ただし、追加照射などで、治療の途中から範囲が変わる場合もあります。

つまり、聞かないと分からないのです。

  • 治療室で「私は脇まで当たっていますか」と聞く
  • 治療開始前に渡された説明書を見返す
  • 放射線治療の診察で担当医に確認する

時々、「この皮膚の印のところが放射線当たるんでしょ?」
と聞かれることがあります。

しかし皮膚についている印は、毎回同じ位置で治療するための目印です。

照射範囲そのものを示しているとは限らないため、印だけで判断せず、治療室で確認しましょう。

なぜ、毛を剃ることが問題になることがあるのか

照射された皮膚は、傷が治りにくくなる

放射線が当たった皮膚では、日焼けのような赤みや乾燥、かゆみ、ヒリヒリした感じが出ることがあります。

症状がない時期から、照射部位の皮膚を清潔に保ち、こすらないようにしておくことが大切です。

照射部位の洗い方や保湿については、放射線治療中の皮膚炎とスキンケアの記事で詳しくまとめています。

カミソリは刃を皮膚に直接当てるため、摩擦や小さな傷につながることがあります。
そのため、照射範囲やその近くでは、刺激を重ねないことが大切です。

脇は、もともと擦れやすい場所

脇は、腕を動かすたびに皮膚どうしが触れ合う場所です。

汗もたまりやすく、下着や服の縫い目も当たります。

放射線が当たっている場所の中でも、もともと刺激を受けやすい条件がそろっています。

そこに処理による刺激が加われば、皮膚の負担はさらに重なります。

電気シェーバーなら大丈夫なのか?

よく言われるのが、「カミソリではなく電気シェーバーで」という方法です。

国立がん研究センター中央病院のスキンケアの案内でも、男性のひげ剃りについて、電気カミソリを使うよう説明されています。

刃が直接皮膚に当たらないぶん、傷ができにくいという考え方です。

ただし、電気シェーバーなら何をしてもよい、という意味ではありません。

  • 強く押し当てれば、皮膚は擦れます
  • 赤みやヒリヒリが出ているときは、電気シェーバーでも刺激になります
  • 皮膚がむけている、ジュクジュクしているときは、処理そのものを止めてください

どうしても処理が必要な場合は、照射部位の皮膚を傷つけないように行うことが大切なので、
道具を替えれば安全になる、ではなく、
傷つけないための手段のひとつとして電気シェーバーという考え方が必要です。

除毛クリーム・脱毛テープ・エステ脱毛は

除毛クリームは薬剤で毛を溶かすもので、皮膚への刺激があります。
脱毛テープは、毛と一緒に皮膚の表面もはがします。

どちらも、照射範囲やその近くでは避けてください。

エステ脱毛や医療脱毛は、カミソリや電気シェーバーとは皮膚への刺激が異なります。

照射期間中に予定がある場合は、自己判断で受けず、
治療を受けている病院と施術先の両方に確認してください。

実際のところ、どうすればいいのか

現場で聞かれたとき、私が確認していたのは、だいたい次のようなことでした。

1.脇が照射範囲に入っているか確認する

まず、治療室で「私の脇は照射範囲に入っていますか」と聞きます。

2.照射範囲の外なら、処理してかまわない

照射範囲の外であれば、むだ毛を処理してもかまわないとされています。

3.照射範囲やその近くなら、なるべく処理を休む

皮膚への刺激を減らすため、治療期間中だけ処理を休む方法もあります。

4.どうしても必要なら、皮膚の状態と方法を確認する

処理してよいと確認できた場合も、カミソリではなく、電気シェーバーを軽く使います。
赤みやヒリヒリ、痛みが出たときは処理を中止し、その日の治療前に伝えてください。

治療が終わったら、いつから剃って良いの?

ここが、意外と知られていません。

皮膚の反応は、治療が終わった瞬間に止まるわけではありません。

放射線性の皮膚炎は、照射がすべて終了してから1〜2週間が最もひどくなりやすい時期とされます。

そして、放射線治療後1か月くらいは、治療中と同じような服装、スキンケアを続けましょうと案内されています。

「終わったから、明日から元どおり」ではありません。

処理を再開するタイミングも、皮膚の赤みや乾燥が落ち着いてからになります。

時期には個人差があるので、再開してよいかどうかは、放射線治療を受けた病院に確認してください。

制汗剤については

脇のことで、もうひとつよく聞かれるのが制汗剤です。

「治療中は使わないほうがいい」と書かれた情報を見かけることがありますが、現在の考え方は変わってきています。

こちらは放射線治療中に制汗剤は使っていい?乳房の照射と脇の汗で、ガイドラインをもとに整理しています。

まとめ

  • むだ毛の処理は、照射範囲内でなければ今までどおりでかまわないとされている
  • ただし、照射の範囲やその近くは、なるべく避ける
  • 乳房の治療でも、脇が範囲に入ることがある。まず自分の範囲を確認する
  • 照射範囲の皮膚は刺激に弱くなることがあるため、カミソリで傷つけないことが大切
  • どうしても必要なら、皮膚を傷つけないことが条件。電気シェーバーはその手段のひとつ
  • 皮膚炎は治療が終わってから1〜2週間が最もひどくなりやすい。治療後1か月くらいは、治療中と同じようなスキンケアを続ける

脇のむだ毛を気にする気持ちは、治療中だからといって消えるものではありません。

夏なら、なおさらです。

だからこそ、「がまんする」でも「いつもどおりにする」でもなく、自分の範囲を知ったうえで決めることが必要です。

ぜひ、治療室で確認してみてください。


※この記事は放射線治療の一般的な情報をまとめたものです。照射範囲や皮膚の状態は一人ひとり異なります。ご自身の治療については、必ず治療を受けている医療機関にご確認ください。

参考情報


この記事を書いた人
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元がん放射線療法看護認定看護師です。がん治療中の方やご家族が、治療中の生活や不安を少し整理できるように、看護師としての経験をもとに情報をまとめています。

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