前立腺がんの放射線治療で尿をためるのがつらい|我慢できないとき

前立腺がんの放射線治療前に尿をためるのがつらいとき 放射線治療前の準備

治療の1時間前に、トイレを済ませます。

そこから、言われた通りに水を飲んで排尿せずに待つ。

30分。

40分。

そろそろ、膀胱限界かも、、、きつくなってきました。

でもまだ治療に呼ばれない。

「あと何分だろう」

「今トイレに行ったら、今日の治療はどうなるんだろう」

治療そのものより、その前の排尿を我慢している時間がつらい。

そう感じている方に向けて書きました。

私は看護師として約15年、うち約5年間は放射線治療に関わる認定看護師として働いてきました。

この記事では、なぜ尿をためる必要があるのか、つらいときにどうしたらよいか、そして自分で飲む量を調整する前に知っておいてほしいことを整理します。

先に結論を書きます。尿をためるという準備は、我慢の強さを試すものではありません。

なぜ、尿をためた状態で治療するのか

前立腺は、膀胱のすぐ下にあります。

上に膀胱、後ろに直腸。

どちらも、中身(尿や便、ガスなど)の量で大きさが変わる臓器です。

前立腺の放射線治療をする場合、
膀胱の大きさを一定にするために、毎回、1時間分の尿を膀胱にためた状態で治療することがあります。

例えば、治療予定時刻の1時間前に排尿し、それ以降は膀胱の中で蓄尿する(排尿を我慢しておく)
といった感じなのですが、

その理由が2つ挙げられます。

  • 膀胱内の容量を一定にすることで、前立腺の位置を安定させること。
  • 頻尿や排尿時の痛みなどの副作用が、強くならないようにすること。

つまり、毎回同じように尿をためておくことで前立腺を同じ位置にするという理由もありますが、

膀胱がふくらんでいると、膀胱の壁が照射範囲から遠ざかることになるので、
放射線が膀胱に当たらないよう守るという側面もあります。

「毎回同じ状態」が狙いであって、「たくさんためること」は重要ではない

もう一つ、大事なところです。

放射線治療の計画は、計画用のCTを撮ったときの体の状態をもとに立てられています。

膀胱がどのくらいの大きさだったか、直腸の状態は。
その状態が前提で立てられているということです。

だから膀胱の中で尿をためることの狙いは、
計画したときと、できるだけ近い状態を毎回つくることです。

そのため、たくさんためればためるほどよい、ということではありません。

少なすぎても、多すぎても、計画のときと違う状態になります。

ですから、「もっと我慢すればもっと良い治療になる」というものではありません。

準備の方法は、病院によって違う

ただし、飲む量も、飲み始める時間も、施設と治療方法によって変わります。

たとえば、ある病院は、治療計画CTのときは予約時間の1時間前に来院してコップ1杯の飲水、体幹部定位放射線治療の場合は1時間前に来院してコップ2杯の飲水をお願いする、などがあります。

インターネットで見つけた他院の「◯mL飲む」という数字を、自分に当てはめないでください。

判断の基準になるのは、いま治療を受けている病院の指示です。

自分で飲む量を減らすと決める前に、伝えてほしい

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

尿を我慢するうえでつらいとき、多くの方がまず考えるのは
水を減らせばいいのでは」ということだと思います。

黙って減らせば、その日はしのげます。

でも、それはおすすめできません。

理由は2つあります。

ひとつは、蓄尿が足りないと、その日の治療の進め方が変わることがあるからです。
場合によってはもう一度おしっこをして水を飲んで1時間待つ、といった、
再蓄尿を行うこともあります。

つまり、待ち時間がかえって延びることにつながります。

もうひとつは、「前より尿をためにくくなった」こと自体が、伝えるべき情報だからです。

前立腺への放射線治療では、治療が進むにつれて、
トイレが近くなったり、急に強い尿意が出たりすることがあります。
治療を受けている間、それが良くなるとは考えづらいです。

つまり、「最初の週は待てたのに、今週は待てない」という変化は、準備の問題であると同時に、
体に起きている変化で、治療の間は良くなることも期待できないのに、
今後も我慢し続けることになる。

黙って水を減らすと、その変化は誰にも伝わらず、さらにつらい状態を我慢し続けることになることも。

伝えるときに、まとめておくとよいこと

「つらいです」だけだと、どうつらいのかが伝わりません。

  • いつから変わってきたか(治療の何週目ごろか)
  • 前はどうだったか(予約時間まで待てていたか)
  • 今はどうか(何分くらいで限界になるか)
  • 夜のトイレの回数は変わったか
  • 排尿するときにしみるような感じはあるか
  • 間に合わなかったことがあるか

そのまま言える形にすると、こうなります。

「治療の初めは待てていたのですが、今週は予約時間の前にもう限界になります。夜も2回起きるようになりました」

治療室の看護師や診療放射線技師で相談して、順番や時間を調整できることがあります。
ただし、何ができるかは病院や治療の内容によって違います。

診察前のメモの作り方は、がん治療の診察前メモにまとめています。無料のPDFも置いています。

待っている時間を、少し楽にする工夫

準備そのものは変えられませんが、待ち方は工夫できます。

  • 座り方を変える(前かがみは腹圧がかかるので、背もたれに預ける)
  • ベルトやズボンの締めつけをゆるめる
  • トイレの近くではなく、少し離れた席に座る(意識が向きすぎるのを避けるため)
  • 手元に何か置いておく(時計を見続けない)
  • 寒い時期は、体を冷やさない(冷えると尿意が強くなりやすい)

ただし、限界のときは我慢し続けず、その時点で伝えてください。

次の診察を待たずに相談したい変化

次のような変化があるときは、次の予定を待たずに、治療を受けている病院へ連絡してください。

  • 尿が出にくい、または出なくなった
  • 尿に血が混じる
  • 排尿のときに強い痛みがある
  • 熱が出ている
  • 下腹部が張って苦しい
  • 尿意があるのに少ししか出ない状態が続く

この目安でも決められないときは、連絡してしまって大丈夫です。

直腸側の準備については

前立腺の治療では、膀胱側だけでなく、直腸側の準備を求められることもあります。
下剤でお通じを整えるよう言われて、今度は便がゆるくなって困る、
という場合は、前立腺の放射線治療で下剤を飲んだら下痢にまとめています。

膀胱と直腸、どちらも「毎回、同じ状態にそろえる」ための準備です。考え方は同じです。

治療が進んでから出てくる排尿や排便の変化については、
骨盤の放射線治療でトイレが不安なときもあわせてどうぞ。

おわりに

放射線治療前の蓄尿などの準備は、毎日続きます。

前処置だから我慢するべきと思い、
医療者に伝えるべきことなのか悩んでしまう方がいらっしゃいます。

でも、毎日やるからといって辛い症状を我慢する必要はありません。

前はどうだったか。今はどうか。いつから変わったか。

つらい症状を伝えられる準備をして治療室に向かう。

それを伝えれば治療を受けている病院のスタッフが対策を考えることにつながります。


この記事は、一般的な情報をまとめたものです。診断や治療方針を決めるものではありません。飲水量や準備の方法は施設によって異なります。必ず治療を受けている医療機関の指示に従ってください。

参考情報

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