トイレに座ります。
排便しようとした瞬間、奥のほうがズキッとします。
出たあとも、ヒリヒリした感じが残ります。
治療が始まったころは、こんなことはありませんでした。
「痔になったのかな」
「便が硬いせいだろうか」
「それとも、放射線が当たっているからだろうか」
薬局で痔の薬を眺めながら、買うかどうか迷う。
そんな方に向けて書きました。
私は看護師として約15年、うち約5年間は放射線治療に関わる認定看護師として働いてきました。
この記事では、なぜ排便のときに痛みが出ることがあるのか、市販薬を考える前に確認してほしいこと、そして治療室で何を伝えればよいかを整理します。
※この記事では、主に前立腺へ体の外から放射線を当てる「外照射」を受けている方を想定しています。小線源治療などでは、副作用の出方や対応が異なることがあります。
排便のときの痛み、副作用の可能性は?

前立腺のすぐ後ろには、大腸の終わりにあたる直腸があります。
放射線治療では、直腸に当たる量をできるだけ減らすように治療計画を立てます。
それでも位置が近いため、直腸の一部に影響が及び、排便するときに痛むことがあります。
どんなに正確に照射しても、位置関係の上で完全にゼロにはできません。
そのため、前立腺の放射線治療中の副作用として、前立腺がんの外照射では、
治療中から治療後の早い時期に、排便するときの痛み(排便時痛)が起こることがあります。
「痔だと思う」と決めつけないで
お尻が痛いとき、多くの方がまず「痔なのか?」と考えるかもしれません。
実際、痔がある方もいます。治療とは関係なく、もともと持っていた方もいることでしょう。
でも、痔だと決めてしまうには注意が必要です。
痔だと決めつけることで市販の薬だけで済ませてしまったり、
治療室で相談せず、一人で判断しようとしてしまう方がいるためです。
前立腺の治療中は、照射範囲に近い場所に、
自分の判断で薬を入れたり塗ったりすることはよくありません。
「痔の薬を使っていいですか」
もし、痔だと感じて薬を使いたい時はこのように医師に確認してみると良いでしょう。
むしろ、使ってから「あれでよかったのかな」と心配するより、先に確認したほうが気持ちも楽です。
便が硬いと痛みが強くでることも
病院の方法によっては前立腺の治療では、直腸に便やガスをためないために、
下剤でお通じを整えるよう言われることがあります。
便が硬いと、出すときに痛みが強くなることがあり、
逆に、下剤が効きすぎて回数が増えると、今度は肛門のまわりの皮膚が荒れて痛くなることがあるためです。
つまり、排便時の痛みは、便の状態と切り離せません。
だから、痛みを伝えるときは、便の硬さも一緒に伝えると良いでしょう。
下剤が効きすぎて困っている場合は、前立腺の放射線治療で下剤を飲んだら下痢にまとめています。
なお、下剤の量を自分の判断だけで変えるのは良くありません。
治療の前準備にも関わってくるためです。
肛門の外側がヒリヒリするときのケア
痛みが続くと、拭くこと自体がつらくなる方もいらっしゃいます。
- 排便のあとは、こすらずに洗う(ぬるま湯で流す)
- トイレットペーパーで強くこすらない。押さえるように
- 洗ったあとは、押さえるように水気を取る
- 温水洗浄便座は、水圧を弱めにする
- 長く座り続けない(うっ血して痛みが強くなることがある)
- 市販の軟膏や座薬を使う前に、治療室で相談する
ここで紹介するのは、肛門の外側がしみる、拭くと痛むといった場合のケアです。
奥の痛みが続くときは、外側のケアだけで済ませず、治療室へ伝えてください。
「洗いすぎ」も刺激になります。
清潔にしようとして何度も洗うと、かえって荒れることがあるので注意しましょう。
治療室で伝えるときに、そろえておくとよいこと

「お尻が痛いです」に次の情報を足すと状態を整理しやすくなります。
- いつから痛むか(治療の何週目ごろか)
- 排便のときだけか、それ以外も痛むか
- 便の硬さ(硬い、普通、ゆるい、水のよう)
- 1日の回数
- 血が付くか(紙に付く程度か、便に混じるか)
- もともと痔があったか
- 市販薬を使ったか(使っているなら、その名前)
- どこが痛むか(肛門の外側、入口、奥のほう)
- どんな痛みか(ズキッとする、しみる、ヒリヒリする)
- 排便が終わったあとも痛みが残るか
そのまま言える形にすると、こうなります。
「1週間前から、便を出すときに奥がズキッとします。出たあとも10分ほどヒリヒリします。便は硬めで、紙に少し血が付きました」
もし、もともと痔がある方は、そのことも伝えてください。判断が変わることがあります。
治療日にスタッフと顔を合わせたとき、次の診察日を待たず、その日の治療前後に伝えて構いません。
診察前のメモの作り方は、がん治療の診察前メモにまとめています。ぜひ参考にしてみてください。
血が出るときは、様子を見ない
骨盤内への放射線治療のあと、下痢便や排便回数の増加などの便通異常、
肛門の痛み、血便が続く場合があることがあります。
放射線の照射により骨盤内の腸管の血流が悪くなるためです。
そのなかで、最も多い症状は血便であり、
持続する出血のために貧血が進行し、息切れや動悸を自覚する場合もあると説明されています。
血便が続いていたり、貧血が進行したりしている場合は、
大腸内視鏡検査を行う必要があることもあります。
血が出ることを「痔かな」ぐらいで片づけないようにしてください。
治療が終わってからも起こることがある
もう一点、知っておいてほしいことがあります。
放射線性腸炎は治療を受けている期間から症状が出る場合もあれば、
治療が終わって数か月から数年してから出現する場合もあると書かれています。
ですから、治療が終わったあとに出てきた症状を、
「もう治療は終わったから関係ない」と考えないようにすることが必要です。
治療後に気になる変化が出たときは、まず今かかっている主治医に相談してください。
必要であれば、主治医から放射線治療を受けた病院へ問い合わせてもらう流れになります。
次の診察を待たずに相談したい変化

次のような変化があるときは、次の予定を待たずに、治療を受けている病院へ連絡してください。
- 便に血が混じる、または量が増えてきた
- 出血が続いている
- 息切れや動悸があり、階段でつらくなった
- 強いお腹の痛みがある
- 熱が出ている
- 痛みで排便できない、または我慢してしまっている
- 痛みで眠れない
この目安で決められないときは、連絡して大丈夫です。
おわりに
排便時の痛みは、治療の影響だけでなく、便の硬さ、肛門まわりの荒れ、
痔などが関係していることがあります。
自分で原因を決める必要はありません。
いつから、どこが、どのように痛むか。
便の硬さや回数、血の有無。
その情報を伝えると、治療室で必要な確認につなげてもらえます。
市販の痔の薬を使いたいときは、商品名や使う時間なども先に確認してください。
※この記事は、一般的な情報をまとめたものです。診断や治療方針を決めるものではありません。薬の使用や症状への対応は、必ず治療を受けている医療機関にご相談ください。
参考情報
- 兵庫医科大学病院 みんなの医療ガイド「放射線性腸炎」
- がん研有明病院「各疾患別の放射線治療 前立腺がん」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「前立腺がん 治療」

