放射線治療のだるさ|対処法と相談の目安

放射線治療中・治療後のだるさについて解説する記事のアイキャッチ 放射線治療

放射線治療を受けていると、体が重く、だるくて動けない日があります。

しっかり寝たはずなのに、朝起きた時点でもう疲れている。何をするにも体が言うことをきかない。少し動いただけで横になりたくなる。

自分でも理由が分からず、「気持ちが弱いのかな」「もっと頑張らないといけないのかな」と責めてしまう方もいます。

でも、このだるさは、気のせいではありません。怠けているわけでもありません。

私はがん放射線療法看護師として、がん患者さんが多い病棟や放射線治療室で勤務してきました。治療中のだるさをうまく説明できず、つらさを抱えたまま過ごしている方にも何度も出会いました。

この記事では、放射線治療中・治療後に感じるだるさについて、考えられる原因、家でできる工夫、医療機関へ相談する目安をお伝えします。

放射線治療中の「だるさ」とは

がん治療中にみられる強い疲れやだるさは、「倦怠感」と呼ばれることがあります。

一般的な疲れなら、眠ったり休んだりすると少し楽になることがあります。しかし、がんや治療に伴う倦怠感は、十分に休んだつもりでも疲れが取れないことがあります。

感じ方には個人差があります。

・朝から体が重い
・何もしていないのに疲れている
・少し歩くだけで休みたくなる
・家事や着替えが負担に感じる
・何もする気が起きない
・考えがまとまらない、集中しにくい

このような状態があっても、外見からは分かりにくいことがあります。

分かってもらいにくいことも、だるさのつらさ

だるさのつらいところは、目に見えないことです。

熱や傷のようには見えないため、「どのくらいしんどいの?」と聞かれても、うまく説明できないことがあります。

見た目はいつもと変わらない。昨日は動けたのに、今日は動けない。そのため、周囲から「少し動いたほうがいいのでは」「気持ちの問題では」と思われているように感じ、さらに苦しくなる方もいます。

でも、だるいものは、だるいんです。

うまく言葉にできなくても、あなたが感じているしんどさは、なかったことにはなりません。

現場でも、「痛い場所があるわけではないけれど、とにかくだるい」「何とも説明しにくい」と話す患者さんがいました。

症状をきれいに説明できなくても構いません。まずは「いつもと違う」「生活するのがつらい」と伝えることから始めてください。

放射線治療中にだるくなる原因は、一つとは限りません

放射線治療中のだるさには、いくつかの原因が関係することがあります。

放射線治療の影響だけでなく、がんそのもの、薬物療法などの併用治療、痛み、貧血、眠れないこと、食事や水分が十分にとれていないこと、筋力の低下、不安や気持ちの落ち込みなどが重なっている場合もあります。

また、放射線治療は短期間で終わる場合もありますが、平日に何週間も通院することもあります。治療そのものに加えて、通院や待ち時間、生活時間の変化が負担になることもあります。

だからこそ、「放射線治療のせいか、別の原因か」を自分で判断する必要はありません。

原因を確認することは、医療者の役割です。本人は、今感じていることを伝えてください。

原因だけでなく、生活の中で困っていることを伝える

だるさは、数字や検査だけでは伝わりにくいことがあります。

医師や看護師へ相談するときは、「だるいです」だけでなく、生活の中で何ができなくなったのかを添えると伝わりやすくなります。

たとえば、

・朝起きても、疲れが取れていない
・着替えや入浴がつらい
・食事を作る途中で横になってしまう
・少し歩くだけで息切れがする
・昼間もほとんど横になっている
・以前できていた家事や仕事ができない
・治療前より急に疲れ方が強くなった

このように伝えてみてください。

「このだるさは何が原因ですか」と聞いてもよいですし、

「だるさで生活に困っています。何かできることはありますか」

と相談しても構いません。

原因によっては、貧血や痛み、不眠、脱水などへの対応によって、症状が和らぐことがあります。

家でできる、だるさとの付き合い方

だるさをすぐに完全になくすことは難しい場合があります。それでも、生活の負担を少し下げるためにできることはあります。

だるさが強い時間と、少し動ける時間を知る

一日の中でも、だるさの強さが変わることがあります。

朝がつらくて午後は少し動ける人もいれば、通院後に強く疲れる人もいます。

「何時ごろにつらくなるか」「何をしたあとに疲れるか」を簡単にメモしておくと、自分のペースをつかみやすくなります。

比較的動ける時間に、その日いちばん必要なことを一つ行う。ほかのことは、できたら行う。

一日を治療前と同じ予定で埋めるのではなく、今の体に合わせて組み直してみてください。

家事や用事を、小さく分ける

「今日は掃除をする」と考えると、大きな負担に感じることがあります。

洗濯機を回したら、いったん休む。食器を全部洗うのではなく、必要な分だけ洗う。買い物は家族や宅配サービスに頼る。

一度に終わらせようとせず、小さく分けることで、体力を使い切りにくくなります。

できないことを減らすだけでなく、「今日は何をしないか」を決めることも必要です。

休むことと、少し動くことのバランスをとる

だるさが強い日は、無理に動かず休んでください。

横になれるときに横になり、楽な姿勢を探します。クッションなどを使い、短い休息をこまめに入れる方法もあります。

一方で、体調がよい日に一日中横になっている必要はありません。

医師から運動を止められておらず、体調が許す場合は、短い散歩や軽い体操、ストレッチなどが、だるさを和らげる助けになることがあります。

大切なのは、頑張って運動することではありません。

昨日と同じ量をこなすのではなく、今日の体調に合わせることです。少し動いてつらさが増すときは中止し、医療者に相談してください。

眠れないことも伝える

夜に眠れず、昼間に強いだるさが出ていることもあります。

痛みや不安で眠れない。何度も目が覚める。昼夜が逆転している。こうした状態が続くときは、我慢せず相談してください。

眠りを妨げている原因を確認し、薬を含めた対応を検討できる場合があります。

食事と水分は、無理のない範囲で

だるいと、食事を用意すること自体が負担になります。

三食をすべて手作りする必要はありません。すぐに食べられるもの、冷凍食品、配食サービスなどを使い、準備に使う体力を減らして構いません。

一度に食べられない場合は、少量ずつに分ける方法もあります。

ただし、食事や水分がほとんどとれない状態は、家での工夫だけで様子を見続けないでください。治療を受けている病院へ連絡しましょう。

口内炎や口の痛みで食べにくいときは、こちらの記事で食事の工夫を詳しく紹介しています。

→ 放射線治療による口内炎で食べられないときの食事の工夫

家族に知っておいてほしいこと

本人が横になっている時間が増えると、家族は「少しでも動いたほうがよいのでは」と心配になることがあります。

反対に、何をしてあげればよいのか分からず、家族自身が疲れてしまうこともあります。

まず知っておいてほしいのは、動けないことを本人が一番もどかしく感じている場合があるということです。

「今日は何ができそう?」と聞くより、

「今日は何をしなくていいことにしようか」

と一緒に減らす方法もあります。

家事を代わる。通院後は予定を入れない。食事を用意できない日は買ってくる。静かに休める時間をつくる。

特別な励ましより、生活の負担を一つ減らすことが支えになる場合があります。

家族だけですべてを抱えず、病院の看護師やがん相談支援センターなどへ相談することも選択肢です。

これは病院に相談してほしいだるさです

だるさが続いていると、「治療中だから仕方がない」と考えてしまうことがあります。

しかし、対応が必要な原因が隠れている場合もあります。

次のような状態があるときは、我慢せず、治療を受けている病院へ相談してください。

・だるさが急に強くなった
・休んでも改善せず、日常生活を送ることが難しい
・息切れ、息苦しさ、動悸がある
・立ちくらみやめまいがある
・発熱がある
・食事や水分がほとんどとれない
・痛みや不眠が続いている
・ぼんやりする、いつもと様子が違う

連絡するか迷うときも、病院から説明されている連絡先へ相談して構いません。

治療部位や治療内容によって、注意が必要な症状は異なります。あらかじめ「どのような症状が出たら、どこへ連絡すればよいですか」と確認しておくと安心です。

急な息苦しさや胸の痛み、意識がはっきりしないなど、緊急性を感じる状態では、通常の診察日を待たずに医療機関へ連絡してください。

放射線治療が終わったあとも、だるさが続くことがあります

治療が終わると、周囲から「もう大丈夫だね」「これで元の生活に戻れるね」と言われることがあります。

けれど、治療終了と同時に、体が治療前の状態へ戻るわけではありません。

放射線治療中に感じた疲れは、治療後に少しずつ軽くなることが多い一方で、原因によっては長く続く場合もあります。

治療が終わったあとも、だるさが強い。以前より悪くなっている。仕事や家事、入浴などの日常生活に支障がある。

そのようなときは、「もう治療が終わったから」と遠慮せず、治療を受けた病院へ相談してください。

私は放射線治療室で勤務していたとき、治療が終わる患者さんに、症状があるときは我慢せず病院へ連絡してよいと伝えていました。

治療後だから相談してはいけない、ということはありません。

だるさを我慢の問題にしないでください

放射線治療中や治療後のだるさは、本人にしか分からない部分があります。

それでも、説明できないから黙っている必要はありません。

「朝から起き上がれない」
「入浴するだけで疲れる」
「通院の翌日は何もできない」

そのような生活の変化は、医療者が状態を考えるための大切な情報です。

頑張って動くことだけが、治療と向き合うことではありません。

休む。人に頼る。予定を減らす。そして、つらさを医療者に伝える。

その日の体に合わせて過ごし方を変えることも、治療中の自分を守るために必要なことです。


※この記事は一般的な情報をお伝えするものであり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。症状や治療については、主治医や治療を受けている医療機関へご相談ください。

【参考情報】

国立がん研究センター がん情報サービス「倦怠感(だるさ)」
国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療の実際」
・National Cancer Institute「Radiation Therapy Side Effects」

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