放射線治療の説明を受けた帰り道。
「月曜から金曜、25回です」
病院の駐車場で、車のドアを開けたところで、ふと手が止まる。
「これ、毎日自分で運転して通うのか」
「途中でしんどくなったら、どうするんだろう」
「家族に頼むにしても、毎日は無理だよな」
放射線治療は、平日に毎日通うことが多い治療です。
外来で受ける場合は、通院手段をどうするかが、そのまま生活の問題になります。
けれど、この疑問は診察では出てきにくい。
治療の話が中心になって、気づけば診察が終わっています。
元がん放射線療法看護認定看護師として、放射線治療を受ける方に関わってきた立場から、
この「運転していいのか」を整理します。
先にお伝えします。
外来で体の外から放射線を当てる「外部照射」を受けることだけを理由に、
全員が一律に運転禁止になるわけではありません。
ただし、運転してよいかは、病気による症状、治療中の体調、使用している薬、
照射部位、併用している治療などによって変わります。
この記事では、主に外来で外部照射を受ける場合について整理します。
「放射線を浴びたから運転できない」ではない
体の外から放射線を当てる外部照射では、治療後に体内へ放射線源が残ることはなく、
体から放射線が出続けることもありません。
そのため、照射を受けた直後であること自体が、運転できない理由になるわけではありません。
運転できるかどうかは、治療後の体調や薬、病気による症状などで考えます。
なお、小線源治療や放射性医薬品を使う治療、鎮静や麻酔を使う治療では注意点が異なります。
病院から受けた説明に従ってください。
(体の中に線源を入れる治療や、放射性の薬を使う治療は扱いが違います。その場合は、必ず病院から説明があります)
では、何が問題になるのか。
運転に影響するのは何?

判断を分けるのは、次のようなことです。
だるさ・疲れ
国立がん研究センターの情報では、放射線治療中の副作用として、
疲れやすさ、だるさ、気力が出ないといった症状があらわれることがあるとされています。
個人差が大きく、まったく感じない方もいれば、強く感じる方もいます。
そして、大事なのはここです。
同じ資料には、治療中の疲れは放射線の影響だけでなく、がんになったことによる精神的な疲れや、外来通院そのものの疲れが加わって起こる、とも書かれています。
放射線の影響だけでなく、毎日の通院による疲れが重なることもあります。
さらに、往復の運転が負担になることもあります。
だるさそのものについては、こちらの記事で詳しくまとめています。
使っている薬
治療中や持病のために使っている薬のなかには、眠気、注意力の低下、めまい、目のかすみなどが起こり、使用中の運転が禁止されているものや、注意が必要なものがあります。
運転しないよう説明されている薬は、眠気を感じていなくても運転しないでください。
自分の薬が当てはまるか分からない場合は、薬の名前を医師や薬剤師に見せて確認するのが確実です。
病気による症状と、照射している場所
運転への影響は、放射線を当てている場所だけでなく、もとの病気による症状も含めて考える必要があります。
たとえば、脳腫瘍や脳転移があり、けいれん、意識が遠のく、視野が欠ける、手足が動かしにくいといった症状がある場合は、運転に支障が出ることがあります。
脳への放射線治療を受けているから一律に判断するのではなく、病気による症状や使用している薬も含め、自己判断せず主治医に確認してください。
けいれんや意識障害などがある場合は、運転免許の扱いに関わることもあります。
必要に応じて、各都道府県警察の安全運転相談窓口にも相談できます。
「今日は大丈夫」が「最後まで大丈夫」ではない
もうひとつ、知っておいていただきたいことがあります。
放射線治療の期間は、病状や目的によって1日から2カ月程度までさまざまです。
数週間続く場合、体の状態は、始まったころと同じままではありません。
治療を始めたころは問題なく運転できても、治療が進むにつれて、だるさや照射部位に応じた症状が出てくることがあります。
症状が出る時期や強さには個人差があるため、
「初日に運転できたから、最後まで運転できる」とは限りません。
だから、「初日に運転できたから、最後まで運転できる」とは限らないのです。
静岡がんセンターが監修している患者向けの情報でも、治療中に体調がすぐれなかったり副作用の影響があったりして、車の運転がしにくくなる可能性があるため、事前に通院のサポートや通院手段を確認しておくと安心だとされています。
つまり、考えておくのは「運転できるかどうか」だけではありません。
運転できなくなった日に、どうするかのほうです。
代わりの手段を、先に用意しておく
治療が始まってから慌てないために、代わりの手段を先に並べておきます。
全部を用意する必要はありません。
「しんどい日は、これを使う」という選択肢が1つあるだけで、その日の判断が楽になります。
自治体の支援や利用できる制度については、病院のがん相談支援センターで相談できます。
その病院に通っていなくても、無料で利用できます。
仕事を続けながら通う場合の時間の組み方は、こちらの記事にまとめています。
送ってもらうときに、伝えておくと頼みやすいこと

家族や知人に送迎を頼むとき、「毎日つきあってもらうことになる」と思うと、言い出しにくくなります。
そこで、頼む前に伝えておくと、相手も予定を立てやすくなることがあります。
ひとつは、時間の見通しです。
1回の放射線治療にかかる時間は、治療方法によって異なりますが、おおむね10分から30分です。
ただし、受付、着替え、待ち時間、診察などを含めた病院の滞在時間は、施設や日によって異なります。
送迎を頼む前に、「何時ごろ来て、何時ごろ終わる見込みか」を治療室で確認しておくと、相手にも伝えやすくなります。
もうひとつは、全部を頼まなくていいということです。
「毎日お願いします」ではなく、「水曜と金曜だけお願いしたい」「帰りだけ頼みたい」という頼み方ができます。
診察で聞いてみていいこと
実は、国立がん研究センターが示している「治療前に医師へ聞いておくとよい質問例」のなかに、
こう書かれています。
「放射線治療施設まで自動車を運転して通院してもよいか」
運転は、治療中の安全と通院を続けるために、確認してよい大切なことです。
遠慮せず、そのまま聞いてみてください。
遠慮せず、そのまま聞いてください。
あわせて、こんな聞き方もできます。
診察で聞きそびれたら、治療室の看護師や診療放射線技師に伝えてもかまいません。
運転を続ける場合に、気をつけたいこと
医療者に確認し、自分で運転して通うことにした場合、負担を減らすためにできることがあります。
- 運転を禁止されている薬を使っている間は、症状がなくても運転しない
- 眠気、ふらつき、目のかすみ、集中しにくさを感じたら運転しない
- 疲れを感じる日は、治療の前後に予定を詰め込みすぎない
通院した日は、それだけでひとつの用事を終えたと考えていただいてかまいません。
そして、体調が悪くて通えない日があるときは、自分の判断で休まずに、
必ず病院へ連絡してください。
休むことが治療にどう影響するのかは、こちらの記事で整理しています。
時間の調整ができることもあります。
まとめ
- 体の外から当てる放射線治療では、放射線は体に残らない。「浴びたから運転できない」ではない
- 運転できるかどうかは、病気による症状、治療中の体調、使用している薬、照射部位、併用治療などによって変わる
- 治療期間中、体の状態は同じままではない。始まりと途中では変わることがある
- 「運転できるか」より「運転できない日にどうするか」を先に決めておく
- 運転について聞くことは、公的機関も質問例に挙げている。聞いていい
毎日通うのは、それだけで大きなことです。
通う方法のことも、治療の一部として、通っている病院で相談してみてください。
※この記事は、公的機関の情報をもとに作成した一般的な情報です。
診断や治療方針を示すものではありません。運転してよいかどうかは、治療の内容、照射している部位、使用している薬、体の状態によって異なります。ご自身の場合については、必ず通っている病院の医師や医療スタッフにご確認ください。
参考情報
- 国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療の実際」
- SURVIVORSHIP.JP「放射線治療を受ける前の準備」(静岡県立静岡がんセンター監修)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん相談支援センターとは」

