「放射線を当てる」と聞くと、
熱かったり、ピリピリしたり、
何か強い刺激があるように思えます。
初めて治療を受ける前の晩、
「明日、どんな感じなんだろう」と、
落ち着かない気持ちで過ごす方も
いらっしゃると思います。
こんにちは。元がん放射線療法看護師 しおりです。
放射線治療室で、
初回の治療を受ける方に、たくさん立ち会ってきました。
先にお伝えします。
放射線が当たること自体に、痛みはありません。
熱さも感じません。
では、実際には何を感じるのか。
この記事では、治療台に横になってから出てくるまでに、
体が何を感じるのかを、順番に整理します。
読み終えるころには、
初回の日の景色が、少し想像できているはずです。
放射線が当たっても、痛みも熱さもありません
まず、いちばん聞かれることから。
放射線が体に当たっても、
直接的な痛みは、ありません。
熱い、冷たい、といった感覚もありません。
レントゲン撮影を思い出してみてください。
撮られている瞬間、何か感じたでしょうか。
おそらく、何も感じなかったと思います。
放射線治療も、体が感じる、という意味では同じです。
放射線そのものには、
「当たっている」という感覚がありません。
これは、治療がちゃんと効いていないという意味ではありません。
感じないまま、体の中では作用している。
それが、放射線という治療の性質です。
では、治療中に感じるのは何か
痛みがないなら、何を感じるのか。
実際に感じるのは、主にこの3つです。
機械の音
治療中、機械から音がします。
「ウィーン」という動作音や、
照射しているあいだの「ブーン」という低い音。
初めて聞くと、少し身構えるかもしれません。
でも、その音は、機械が正しく動いている音です。
音の大きさや種類は、装置によって違います。
機械が動く気配
治療台の周りを、機械が回ることがあります。
自分の上や横を、大きなものが動いていく。
その気配は、感じます。
ただ、機械が体に触れることはありません。
ぶつかることのないように、動きは決められています。
台の硬さと、姿勢のつらさ
意外かもしれませんが、
治療中に「つらい」と感じる方が多いのは、これです。
治療台は、平らで硬めにできています。
その上で、決められた姿勢のまま、動かずにいる。
数分のことでも、
腕を上げたままだったり、体を反らせたままだったりすると、
だんだん、その姿勢がつらくなってくることがあります。
放射線が痛いのではなく、
じっとしている姿勢がつらい。
そう話す方は、少なくありませんでした。
「じっとしていられるか」が不安なとき
姿勢の話をすると、
「自分は、動かずにいられるだろうか」と
心配になる方がいます。
咳が出やすい方、痛みがある方、
じっとしているのが苦手な方。
不安になるのは、自然なことです。
これも、事前に伝えておいて大丈夫です。
「咳が出るかもしれない」
「この姿勢だと、腰が痛くなりそう」
そう伝えておけば、
姿勢を工夫したり、
痛みをやわらげる薬を使うタイミングを
一緒に考えたりできることがあります。
当日、我慢して臨むより、
先に言っておくほうが、ずっと楽になります。
治療室に一人になることについて
もう一つ、事前に知っておくと落ち着けることがあります。
放射線を当てているあいだ、
治療室には、あなた一人になります。
スタッフは、いったん部屋を出ます。
これは、あなたを置いていくわけではありません。
スタッフが毎日、何人もの治療に立ち会うことになるため、
必要のない放射線を浴びないようにするための、決まりです。

そして、部屋を出たあとも、
スタッフは操作室のモニターで、
あなたの様子をずっと見ています。
マイクを通して、声をかけられることもあります。
つまり、一人にされているのではなく、
別の部屋から、見守られている状態です。
もし治療の途中で、
どうしてもつらくなったり、
体調が悪くなったりしたときは、
手を上げるなどして、知らせてください。
必要なときには、治療を止めることができます。
合図の仕方は、病院によって説明が違います。
初回のときに、
「途中でつらくなったら、どうすればいいですか」と
確認しておくと、安心して臨めます。
治療にかかる時間は、どのくらい?
「治療」と聞くと長そうに感じますが、
実際に放射線が当たっている時間は、
数分程度のことが多いです。
ただし、部屋に入ってから出るまでには、
もう少し時間がかかります。
このうち、いちばん時間をかけるのが位置合わせです。
毎回、まったく同じ場所に当てるために、
体の位置を細かく合わせていきます。
初回の日の流れは、こちらの記事で詳しく説明しています。
「待たされている」と感じるかもしれませんが、
その時間は、
正確に当てるために必要な時間です。
かかる時間は、治療の内容や装置によって変わります。
初回は説明などもあるため、
2回目以降より、長くかかることが多いです。
治療のあと、体から放射線は出ないの?
これも、よく聞かれることです。
一般的な放射線治療(外部照射)では、
放射線は、当たったその瞬間に体を通り抜けます。
放射線そのものが、体に残ることはありません。
だから、治療のあとに、
あなたの体から放射線が出ることはありません。
家族や、周りの人に影響が及ぶこともありません。
小さなお子さんやお孫さんを抱っこしても、
同じ布団で眠っても、問題ありません。
「がんがうつる」と誤解されることもありますが、
がんは、人にうつる病気ではありません。
ただし、体の中に放射線を出すものを入れる治療
(小線源治療など)の場合は、扱いが変わります。
その場合は、病院から具体的な説明があります。
自分の治療がどちらなのか分からないときは、
遠慮なく確認してください。
初回の日を、少し楽に迎えるために
初めての治療の日は、
誰でも緊張します。
それは、当たり前のことです。
いくつか、覚えておくと楽なことがあります。
- 治療部位を出しやすい、ゆったりした服で行く
- 初回は時間がかかるので、余裕をもって出かける
- 不安なことは、その場でスタッフに聞いていい
- 「途中でつらくなったときの合図」を、先に確認しておく
治療が始まる前にそろえておくとよいものは、こちらの記事にまとめています。
そして、これがいちばん大事かもしれません。
分からないことを、分からないまま受けなくていい。
治療室のスタッフは、毎日その説明をしています。
「こんなこと聞いていいのかな」ということは、ありません。
感じないまま、進んでいく
放射線が当たること自体に、痛みも熱さもありません。
感じるのは、機械の音と、動く気配と、
じっとしている姿勢のつらさ。
そして、少しの緊張です。
治療は、あっけないほど静かに終わります。
「これで終わり?」と拍子抜けする方も、いらっしゃいます。
初めての日に不安なことがあれば、
そのまま、治療室のスタッフや主治医に伝えてください。
聞いておけば、次の日からは、
その分だけ落ち着いて臨めます。
聞きたいことを、忘れないように書き留めておきたい方は、
診察前に整理できるメモも用意しています。
【無料の診察前メモPDF】
この記事は、放射線治療を受ける方の参考に、一般的な情報をまとめたものです。 治療の進み方、かかる時間、装置の動きや音、合図の方法などは、治療の内容や医療機関によって異なります。ご自分の治療については、必ず治療を受けている医療機関にご確認ください。
参考情報
- 国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療」
- 日本放射線腫瘍学会(JASTRO)「放射線治療Q&A」

