※本記事の医療情報は、2026年6月18日時点で確認した公的機関・医療機関の情報をもとに作成しています。
放射線治療が進むにつれて、照射している部分の皮膚が赤くなったり、乾燥したり、ヒリヒリしたりすることがあります。
目に見える変化だからこそ、
「このまま悪化するのではないか」
「洗い方が悪かったのかな」
「何か塗ったほうがいいのだろうか」
と不安になる方も少なくありません。
そばで見ているご家族も、
「何かしてあげたいけれど、かえって刺激になったらどうしよう」
と迷うことがあります。
放射線治療によって起こる皮膚の変化は、本人の肌が弱いからでも、ご家族のケアが足りなかったからでもありません。
照射する部位や放射線量、治療方法などによって程度は異なりますが、放射線が照射範囲にある正常な皮膚にも影響することで起こります。
大切なのは、「自分たちのケアが悪かった」と責めることではありません。
照射部位への刺激を減らし、変化があれば早めに医療者へ伝えることです。
この記事では、次のことをお伝えします。
- 放射線治療で皮膚に変化が起こる理由
- 照射部位の洗い方と拭き方
- 衣類や入浴で刺激を減らす工夫
- 保湿剤を使うときの注意
- ご家族が手伝うときに確認したいこと
- 病院へ相談したほうがよい皮膚の変化
- 治療終了後もケアを続ける理由
皮膚の状態や病院の方針によって、適切なケアは異なります。
この記事だけで判断せず、治療を受けている施設から説明された方法を優先してください。
放射線治療で皮膚炎が起こるのはなぜ?
放射線治療では、がんのある部分へ放射線を照射します。
皮膚の細胞は日々生まれ変わっていますが、放射線の影響を受けると、皮膚の回復が追いつかなくなることがあります。
その結果、照射部位に次のような変化が起こる場合があります。
- 乾燥する
- かゆくなる
- ヒリヒリする
- 熱を持ったように感じる
- 赤くなる
- 色が濃くなる
- 皮膚がむける
- 水ぶくれができる
- 汁が出る
どの程度の症状が起こるかは、照射する場所や範囲、放射線量、治療方法、皮膚が重なる部位かどうかなどによって異なります。
すべての人に同じ症状が起こるわけではありません。
また、赤みや乾燥が出たからといって、「ケアに失敗した」という意味でもありません。
放射線皮膚炎は、症状がないうちから皮膚を清潔に保ち、摩擦や刺激を減らすことが基本です。
皮膚の変化は、治療終了後に強くなることもあります
放射線による皮膚の変化は、治療を始めてすぐに起こるとは限りません。
治療開始後しばらくしてから、乾燥や赤み、かゆみなどが現れ、治療が進むにつれて強くなることがあります。
注意したいのは、放射線治療が終わった日に、皮膚への影響もすぐに終わるわけではないことです。
治療終了後も皮膚の反応が続き、終了後1~2週間ほどに症状が強くなることがあります。
「治療が終わったのに、赤みが増えてきた」
という場合も、自己判断でケアを中止せず、治療施設へ相談してください。
治療後もしばらくは、病院から説明された洗い方や服装、保湿などを続けます。
いつまで続ければよいか分からないときは、放射線治療室の看護師や診療放射線技師などへ確認しましょう。
照射部位を洗うときは、強くこすらない
皮膚を清潔に保つことは大切ですが、「きれいにしなければ」と強く洗う必要はありません。
放射線が当たっている部分の皮膚は、普段より刺激を受けやすい状態です。
入浴やシャワーの際は、治療施設から指示がない限り、次のような洗い方を基本にします。
石けんはよく泡立てる
石けんや洗浄料を使う場合は、手のひらでよく泡立ててから、泡を皮膚にそっとのせるように洗います。
ナイロンタオルや硬いスポンジでこするのは避けましょう。
泡立てることが難しい場合や、石けんがしみる場合は、お湯やシャワーでやさしく流す方法について医療者へ相談してください。
熱すぎるお湯を避ける
熱いお湯は、乾燥やヒリヒリ感を強めることがあります。
本人が熱いと感じない、ぬるめのお湯を使いましょう。
拭くときもこすらない
入浴後は、タオルでゴシゴシ拭かず、やわらかいタオルをそっと押し当てて水分を取ります。
皮膚がむけている、出血している、汁が出ている場合は、いつもの洗い方を続けてよいか、治療施設へ確認してください。
かゆくても、ひっかかない工夫をする
皮膚が乾燥すると、かゆみが出ることがあります。
けれど、ひっかくと皮膚が傷つき、痛みや炎症が強くなることがあります。
かゆみがあるときは、我慢だけで乗り切ろうとせず、医療者へ伝えてください。
処方薬や保湿剤の調整が必要な場合があります。
寝ている間に無意識にかいてしまう場合は、
- 爪を短くしておく
- やわらかい衣類を選ぶ
- 汗や蒸れを減らす
- 寝具が皮膚へ強く当たっていないか確認する
などの工夫があります。
ただし、湿布、冷却シート、絆創膏などを、自己判断で照射部位へ貼らないでください。
粘着部分が皮膚への刺激になったり、はがすときに皮膚を傷つけたりすることがあります。
衣類や下着の摩擦を減らす
照射部位によっては、下着の縁、服の縫い目、ベルト、マスクのひもなどが当たり、痛みを感じることがあります。
服装は、本人が心地よいと感じることを優先しながら、次の点を確認してみてください。
- 締めつけが強くない
- 縫い目やタグが照射部位に当たらない
- 肌触りがやわらかい
- 汗や蒸れがこもりにくい
- 着脱するときに皮膚をこすらない
胸部や乳房周辺へ照射している場合は、下着の縁が赤くなった部分へ当たることがあります。
首周辺の場合は、襟やマスクのひもが刺激になることもあります。
骨盤周辺では、下着やズボンの締めつけが気になることがあります。
「痛いけれど、治療中だから仕方がない」と我慢せず、どの部分が当たって痛いのかを医療者へ伝えてください。
衣類の選び方や、皮膚を保護する方法を一緒に考えてもらえる場合があります。
保湿剤は、病院の指示を確認してから使う
放射線治療中の皮膚では、清潔を保ち、乾燥を防ぐために保湿剤を使用することがあります。
ただし、どの保湿剤を使うか、どの時期から使うか、いつ塗るかについては、施設や皮膚の状態によって指示が異なります。
まずは、次のことを確認してください。
- 病院から処方または指定された保湿剤があるか
- 市販の保湿剤を使ってよいか
- 照射部位へ直接塗ってよいか
- 放射線治療当日は、いつ塗ればよいか
- 赤みや皮むけがある部分にも使用してよいか
- 処方された外用薬と一緒に使う場合の順番
「放射線治療の直前は必ず塗ってはいけない」「治療直前でも問題ない」と、すべての施設に共通するルールとして決めることはできません。
製品や治療方法、施設の方針によって異なるため、照射当日の使い方は放射線治療室で確認しましょう。
市販の保湿剤を選ぶときに確認したいこと
治療施設から市販品を使用してよいと言われても、店頭には多くの商品があり、何を選べばよいか迷うことがあります。
その場合は、商品名だけで決めず、次の点を医療者や薬剤師へ相談してみてください。
- 照射部位へ使ってよいか
- 香りや清涼感が強すぎないか
- 塗ったときにしみないか
- 強くこすらずに広げられるか
- 本人が続けやすい容器や使用感か
- 傷や皮むけのある部分にも使えるか
「無添加」「天然成分」「敏感肌用」などと表示されていても、放射線治療中の照射部位に必ず合うとは限りません。
ヘパリン類似物質、セラミド、ワセリンなど、さまざまな保湿成分がありますが、特定の成分や剤形がすべての人に最適とは言えません。
また、固いクリームより乳液のほうが塗りやすい人もいれば、軟膏のほうが合う人もいます。
皮膚の状態や照射部位、処方されている薬に合わせて選ぶことが大切です。
使用後に、
- 強くしみる
- 赤みが増える
- かゆみや痛みが強くなる
- 腫れる
といった変化があれば、一度使用を中止し、治療施設へ相談してください。
保湿剤は、強くすり込まない
保湿剤を使う場合も、強くこすってなじませる必要はありません。
清潔な手に取り、皮膚を引っ張ったり、何度もこすったりしないように、やさしく広げます。
塗る量や回数は、処方された薬や製品によって異なります。
「少ないほうが刺激にならないだろう」と自己判断で減らしたり、反対に「たくさん塗れば早くよくなる」と過剰に使ったりせず、説明された方法に従ってください。
皮膚がむけている、水ぶくれがある、汁が出ている場合は、通常の保湿剤をそのまま塗ってよいとは限りません。
そのような変化がある場合は、先に医療者へ連絡しましょう。
家族が手伝うときは、本人の希望を確認する
背中や首の後ろなど、自分では見えにくい部分へ照射している場合、皮膚の変化に気づきにくいことがあります。
本人が希望すれば、ご家族に状態を見てもらったり、保湿を手伝ってもらったりする方法もあります。
ただし、家族が毎日すべてのケアを担当しなければならないわけではありません。
触れる前に、
「赤くなっていないか見ようか?」
「今日は塗るのを手伝おうか?」
「自分で塗りたい?」
と確認してみてください。
本人が触れられたくない日や、自分で行いたい日もあります。
また、家族が市販品を選び、皮膚炎を治さなければならないわけでもありません。
分からないことがあれば、家族だけで判断せず、本人と一緒に治療施設へ相談してください。
皮膚の状態をスマートフォンで撮影し、受診時に見せたいと考える場合も、撮影前に本人の了承を得ましょう。
次の診察日を待たずに相談したほうがよい変化
次のような状態がある場合は、次回の診察日まで待たず、放射線治療室や治療を担当する診療科へ連絡してください。
- 赤みやヒリヒリ感が急に強くなった
- 痛みやかゆみで眠れない
- 衣類や下着が触れるだけでも強く痛む
- 皮膚が大きくむけてきた
- 水ぶくれができた
- 皮膚から汁が出ている
- 出血している
- 腫れが強くなった
- 処方された薬を使ってもつらい
- どの薬や保湿剤を使えばよいか分からない
- 発熱など、皮膚以外の体調変化もある
どのくらい赤いのか、いつから悪化したのか、何を塗ったのかを伝えると、状態を共有しやすくなります。
電話で伝える場合は、
「放射線を当てている部分が、昨日から赤くなり、服が触れるだけでも痛みます」
など、場所、始まった時期、症状を具体的に伝えてください。
治療が終わったあとも、しばらく肌をいたわる
放射線治療が終了しても、皮膚の回復には時間がかかります。
治療が終わったからといって、すぐに普段と同じ洗い方や衣類へ戻す必要はありません。
治療施設から説明された期間は、
- 強くこすらない
- やさしく洗う
- 摩擦の少ない衣類を選ぶ
- 指示された保湿や外用薬を続ける
- 強い日差しや刺激から守る
といったケアを続けます。
皮膚の赤みが落ち着いたあとも、乾燥しやすさや色の変化が残ることがあります。
回復の速度には個人差があります。
「ほかの人より治りが遅いのでは」と自分を責めず、気になる変化があれば治療施設へ相談してください。
まとめ|放射線治療中の肌ケアで覚えておきたいこと
放射線治療による皮膚の変化は、本人の肌が弱いからでも、ご家族のケアが足りなかったからでもありません。
照射部位に起こりうる副作用の一つです。
照射部位はやさしく洗う
石けんを使う場合はよく泡立て、手でそっと洗います。
タオルやスポンジで強くこすることは避けましょう。
拭くときも摩擦を減らす
やわらかいタオルを押し当てるようにして、水分を取ります。
衣類の刺激にも注意する
締めつけ、縫い目、タグ、下着の縁などが照射部位に当たっていないか確認しましょう。
保湿剤は治療施設の指示を優先する
どの製品を、いつ、どのように使うかは、施設や皮膚の状態によって異なります。
市販品を使ってよいか分からない場合は、先に確認してください。
家族だけで判断しない
本人が希望すれば、見えにくい部分の確認や保湿を手伝う方法があります。
ただし、家族が皮膚炎を治す責任を負う必要はありません。
痛みや皮むけを我慢しない
赤み、痛み、水ぶくれ、皮むけ、汁、出血などがある場合は、早めに治療施設へ伝えましょう。
治療中の皮膚について「これくらいで相談してよいのかな」と迷うことがあります。
けれど、皮膚の変化を早めに伝えることは、治療チームが必要なケアを考えるための大切な情報になります。
一人で判断せず、放射線治療室の看護師、診療放射線技師、医師などへ相談してください
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参考情報
- 国立がん研究センター中央病院「放射線治療中のスキンケア」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療の実際―副作用と対策」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「皮膚のトラブル」
- 日本放射線腫瘍学会「放射線治療の支持療法」
免責事項
本記事は、放射線治療中の皮膚ケアに関する一般的な情報を提供するものであり、個別の診断、治療、使用する外用薬や保湿剤を決定するものではありません。
照射部位、治療方法、皮膚の状態、処方薬などによって適切なケアは異なります。
病院から説明された方法や処方された外用薬を優先し、皮膚の赤み、痛み、皮むけ、水ぶくれ、出血などがある場合は、治療を受けている医療機関へご相談ください。

