放射線治療を受ける方のだるさを支えるご家族へ|理解しておきたいことと声のかけ方

放射線治療を受ける方のだるさを支えるご家族へ向けて、だるさの理解と声のかけ方を解説する記事のアイキャッチ画像 放射線治療

家族の一人が放射線治療を受けていて、毎日のようにだるそうにしている。

横になっている時間が増え、以前より会話も少なくなった。何かしてあげたいけれど、何をすればよいのか分からない。

「私には、このつらさを分かってあげられない」

そう感じて、申し訳なくなる方もいるかもしれません。

私はがん放射線療法看護師として、放射線治療室で多くの患者さんとご家族に接してきました。

だるさを抱える本人のそばで、どう関わればよいのか分からず、戸惑っているご家族の姿も見てきました。

この記事では、放射線治療中の本人がだるそうにしているとき、家族としてできることをお伝えします。

あわせて、支えている家族自身の疲れにどう気づき、どこへ相談すればよいのかも整理します。

だるさは、家族にも分かりにくい症状です

だるさは、外から見えにくい症状です。

体温は測ることができます。傷や腫れは、目で確認できることもあります。

けれど、だるさは数字や見た目だけでは、どの程度つらいのか分かりにくいものです。

本人自身も、

「体が重い」

「何もしていないのに疲れる」

「とにかくしんどい」

としか説明できないことがあります。

昨日は少し動けたのに、今日はほとんど横になっている。午前中は元気に見えたのに、午後になると会話もつらそうにしている。

そのため、家族も毎日手探りになります。

「今日はどれくらいつらいのだろう」

「休ませた方がいいのか、少し動いた方がいいのか」

「話しかけた方がいいのか、そっとしておいた方がいいのか」

迷うのは、家族の理解が足りないからではありません。

だるさそのものが、本人にも家族にも説明しにくい症状なのです。

完全に分かってあげられなくても、支えることはできます

本人のつらさを、家族が同じように感じることはできません。

代わってあげることもできないため、そばにいる家族も、もどかしさを感じることがあります。

けれど、本人のつらさを完全に理解できなければ、支えられないわけではありません。

分かったふりをせず、

「同じようには分からないけれど、つらいことは伝わっているよ」

と伝える方法もあります。

うまい言葉が思いつかないときは、無理に励まさなくても構いません。

「しんどいね」

と、本人の言葉をそのまま受け止める。

話したくなさそうなときは、静かに過ごす。

一人になりたそうなら、少し離れて見守る。

そのとき本人が望んでいる距離で関わることも、支え方の一つです。

まず、今どうしてほしいかを確認する

だるさの強さや、本人が望む関わり方は、日によって変わります。

昨日は話を聞いてほしかったけれど、今日は静かに休みたいかもしれません。

家族が毎回、正解を当てる必要はありません。

分からないときは、短く確認してみてください。

「今は話したい? 静かに休みたい?」

「何かしてほしいことはある?」

「これは私がやろうか。それとも自分でやりたい?」

本人に決めてもらうことで、家族側がすべてを判断しなくてもよくなります。

ただし、何度も選択を求めると、それ自体が負担になることがあります。

返事をするのもつらそうな日は、

「必要になったら呼んでね」

と伝え、休める時間をつくるだけでも構いません。

「何かをする」より、「しなくていいことを増やす」

家族として、何かしてあげたい、役に立ちたいと思うのは自然なことです。

ただ、だるさが強い日には、「何かをしてもらうこと」よりも、「やらなければならないことが減ること」の方が助けになる場合があります。

たとえば、料理を作って「今のうちに食べて」と勧めるのではなく、食べられそうなものを冷蔵庫に入れておく。

「食べられそうなときに、ここにあるよ」

と伝えて、食べる時間は本人に決めてもらう。

元気づけようと外出を勧めるのではなく、

「今日は予定を入れないでおこう」

と決める。

掃除、洗濯、買い物など、本人が気にしている家事を一つ引き受ける。

通院後はほかの用事を入れず、帰宅したらすぐ休めるようにしておく。

家族ができることは、本人の予定を増やすことだけではありません。

「今日は何をしなくていいことにするか」を一緒に考えることもできます。

声かけが、プレッシャーになることもあります

「頑張って」

「ちゃんと食べて」

「少しは動いた方がいいよ」

これらは、本人を心配する気持ちから出る言葉です。

けれど、だるさで動けない本人には、「頑張れていない自分」を責められているように聞こえる日があります。

代わりに、本人が選べる言葉や、負担を引き受ける言葉が届きやすいことがあります。

「今、食べられそうなものはある?」

「今は無理なら、あとでもいいよ」

「洗濯は私がやっておこうか?」

「今日は何を休むことにしようか?」

大切なのは、いつでも完璧な声かけをすることではありません。

心配のあまり、強く言ってしまう日もあります。あとから「言い方がよくなかった」と気づくこともあります。

そのときは、

「さっきは急かすような言い方になってしまったね」

と伝え直せばよいのです。

一度の声かけで、家族としての支え方すべてが決まるわけではありません。

家での変化を、医師や看護師へ伝えてください

通院中の短い時間だけでは、家での様子が医師や看護師へ十分に伝わらないことがあります。

診察室では座って話せていても、帰宅すると長時間横になっているかもしれません。

本人の了承を得られるなら、家での変化を医療者へ伝えてみてください。

たとえば、

・帰宅後は、ほとんど横になっている
・着替えや入浴も負担になっている
・食事や水分をとる量が減っている
・少し歩くだけで、息切れしている
・眠れない日が続いている
・以前より急に、だるさが強くなった
・会話が減り、いつもより反応が鈍い

原因を家族が判断する必要はありません。

いつから、どのような状態があり、生活にどれくらい影響しているかを伝えることが、医療者が状態を確認する手がかりになります。

急にだるさが強くなった、息苦しさや動悸がある、発熱している、食事や水分がほとんどとれないなどの変化があるときは、様子を見すぎず、治療を受けている病院へ相談してください。

だるさの原因や、病院へ相談する目安については、関連記事「放射線治療のだるさ|対処法と相談の目安」で詳しく紹介しています。

家族自身の疲れにも、気づいてください

ここからは、本人ではなく、支えている家族自身の話です。

家族は、本人のそばにいるうちに、自分が疲れていることに気づきにくくなります。

「私が支えなければ」

「本人の方がつらいのだから」

と、自分の睡眠や食事、体調を後回しにしてしまうことがあります。

私が放射線治療室で勤務していたときも、患者さんを気遣うご家族が、実はほとんど眠れていなかったり、緊張した状態が続いていたりすることがありました。

次のような変化が続いているときは、家族自身にも休息や相談が必要です。

・夜よく眠れない、何度も目が覚める
・食欲が大きく落ちた、または食べ続けてしまう
・気持ちが沈み、以前楽しめていたことを楽しめない
・本人のことばかり考え、自分の生活が手につかない
・涙が出やすい、いら立ちが続いている
・誰とも話したくない
・頭痛、胃の痛み、肩こりなどの体調不良が続いている

一つ当てはまったから、すぐに病気という意味ではありません。

ただ、つらい状態が続き、日常生活に影響が出ているなら、家族自身も相談して構いません。

家族が相談できる場所もあります

「患者本人ではないから、病院へ相談してはいけない」

と思う必要はありません。

まずは、本人が通院している病院の看護師や、がん相談支援センターに相談する方法があります。

がん相談支援センターでは、患者本人だけでなく、家族の心配や悩みについても相談できます。

「本人へどう声をかければよいか分からない」

「家での介護や家事が負担になっている」

「自分も疲れてしまった」

「利用できる制度やサービスを知りたい」

このような相談でも構いません。

何を相談すればよいか整理できていない段階でも、今の状況を話すことから始められます。

家族自身の心身の不調が続いている場合は、かかりつけ医へ相談する方法もあります。

必要に応じて、心療内科や精神科、心理士などの専門家につないでもらえることがあります。

医療機関によっては、患者本人だけでなく、家族を対象とした心のケアを行っているところもあります。

すべての病院に同じ窓口があるわけではないため、まずは病院の相談窓口や、がん相談支援センターへ確認してみてください。

家族が休むことは、支えることをやめることではありません

家族が休む時間を持つことは、本人を見放すことではありません。

家族の中で役割を交代する。

頼める家事を人に頼む。

冷凍食品や配食サービスを利用する。

買い物や掃除の回数を減らす。

相談できる人に、今の状況を話す。

こうして負担を少しずつ分けることも、支え方の一つです。

通院への付き添いも、必ず一人の家族が毎回担当しなければならないとは限りません。

本人の体調や移動方法を確認しながら、ほかの家族と交代できないか考えたり、付き添いが必要か医療者へ相談したりする方法があります。

休むために、「本人のためだから」という理由をつけなくてもよいのです。

支えている家族自身にも、眠る時間、食事をとる時間、自分の生活を守る時間が必要です。

何か特別なことができたかどうかだけで、家族の支えは決まりません。

その日の本人の様子を見ながら、できることを一つ減らす。

そして、家族自身も抱え込みすぎない。

それも、治療を受ける本人と一緒に生活していくための、大切な関わり方です。


※この記事は、一般的な情報をお伝えするものであり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。ご本人の症状については、主治医や治療を受けている医療機関へご相談ください。支えているご家族自身の心身の不調については、かかりつけ医などの医療機関や地域の相談窓口へご相談ください。

参考情報

・国立がん研究センター がん情報サービス「ご家族、まわりの方へ」
国立がん研究センター がん情報サービス「家族ががんになったとき」
国立がん研究センター がん情報サービス「がん相談支援センターとは」
国立がん研究センター がん情報サービス「心のケア」

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