放射線治療で「別のがんができる」のが心配なとき|二次がんとは

放射線治療による二次がんが心配な方へ向けた記事のアイキャッチ画像 放射線治療

「がんを治すために放射線をあてるのに、その放射線で、また別のがんができることがあるんですか」

放射線治療について調べていて、「二次がん」という言葉を目にすると、不安になりますよね。

「がんを治すための治療なのに、本末転倒ではないか」

「治療を受けたことを、何年後かに後悔しないだろうか」

そう考え始めると、放射線治療を受けること自体に迷いが出る方もいると思います。

二次がんのリスクはゼロではありません。
一方で、放射線治療を受けた人全員に起こるものでも、
どの治療でも同じ確率で起こるものでもありません。

この記事では、放射線治療を勧められたものの、将来、別のがんができる可能性が怖い方に向けて、

  • 二次がんは再発や転移と何が違うのか
  • 「約1%」という数字をどう読めばよいのか
  • リスクがゼロではないのに、なぜ放射線治療が勧められるのか
  • 自分の場合について、何を医療者に聞けばよいのか

を順番に整理します。

不安を無理に打ち消すのではなく、分かっていることと、
個別に確認しなければ分からないことを分けて考えていきましょう。

二次がんは、再発や転移とは別のもの

まず知っておきたいのは、二次がんは、もとのがんの再発や転移とは同じではないということです。

再発は、治療したがんが再び現れることです。転移は、
もとのがんの細胞が別の臓器へ広がった状態をいいます。

一方、二次がんは、最初のがんとは別に、新しく発生したがんを指します。

ただし、「二次がん」という言葉には、少し注意が必要です。

一般のがん統計では、「一度がんになった方に、その後、新しく別のがんが見つかった場合」
を広く二次がんと呼ぶことがあります。

この中には、年齢、生活習慣、体質、遺伝的な要因などが関係するがんも含まれます。
すべてが、以前に受けた治療によって起きたものではありません。

その一方で、放射線治療の副作用を説明するときは、
放射線の影響が関係したと考えられる新しいがんを「二次発がん」や「治療関連の二次がん」
と呼ぶことがあります。

この記事で扱うのは、後者の「放射線治療との関連が考えられる二次発がん」です。

治療後に別のがんが見つかったからといって、
それだけで「放射線治療が原因だった」と決められるわけではありません。


まず、ここを分けて考えることが大切です。

なぜ、放射線治療で二次がんが起こる可能性があるのか

放射線治療は、放射線によってがん細胞の遺伝子に傷をつけ、
がん細胞が増える力を失わせる治療です。

治療では、がんや治療が必要な範囲に放射線を集中させます。
それでも、照射する場所の近くにある正常な細胞へ、一定の放射線があたることがあります。

正常な細胞の多くは、受けた影響を修復したり、そのまま問題なく経過したりします。
しかし、ごく一部の細胞に起きた変化が長い年月をかけて重なり、
まれに新しいがんの発生につながる可能性があります。

二次発がんが現れるまでの期間は、がんの種類によって同じではありません。

日本放射線腫瘍学会の「放射線治療計画ガイドライン2020年版」では、
固形がんは治療から5年から数十年という長い期間を経て現れることがあるとされています。

そのため、二次発がんは、皮膚の赤みや口内炎などのように、
治療中や治療直後に起こりやすい副作用とは違います。

多くは、治療後の長期的な影響として考えるものです。

ただし、「治療後5年を過ぎたら、二次がんが起こる」という意味ではありません。

起こる時期には幅があり、そもそも二次発がんが起こらない方が大部分です。

二次がんが起こる確率は、どれくらいなのか

「可能性があります」だけでは、自分がどのくらい心配すればよいのか分かりませんよね。

日本放射線腫瘍学会のガイドラインでは、放射線治療による二次発がんのリスクについて、
**「5年生存例の約1%」**が一つの目安として示されています。

ただし、この数字は、

  • 治療後5年以内に、1%の方に起こる
  • 放射線治療を受けた人は、全員一律に1%である
  • これから治療を受ける自分の確率が、ちょうど1%である

という意味ではありません。

二次発がんのリスクは、治療を受けた年齢、照射する部位、放射線の量、
照射する範囲、治療後の経過期間、併用した薬物療法などによって変わります。

若い年齢で治療を受ける場合は、その後の人生が長いことも含め、
長期的な影響をより慎重に考える必要があります。

一人ひとりの条件を入れれば、必ず正確な確率が出せるわけでもありません。

主治医や放射線腫瘍医には、ご自身の治療内容を踏まえて
「どのような長期的な影響を考えているか」を聞くことができます。

検索すると、もっと大きな数字が出てくるのはなぜ?

二次がんについて検索すると、「約1%」より大きな数字が見つかることがあります。

その理由の一つは、「二次がん」という同じ言葉で、数えているものが違うからです。

国立がん研究センターのがん統計Q&Aでは、1985年から2004年までの大阪府の研究として、
60歳代で最初のがんと診断された方のうち、
その後10年間に別のがんと診断された割合が13.0%だったと紹介されています。

ただし、こちらは放射線治療が原因と考えられるがんだけを数えた数字ではありません。

年齢や生活習慣、共通するがんの危険因子などによって新しく発生したがんも含む、
広い意味での二次がんです。

一方、「5年生存例の約1%」は、放射線治療による二次発がんについて示された目安です。

この2つは、対象も数え方も違います。そのため、数字だけを並べて比べることはできません。

リスクがゼロではないのに、なぜ放射線治療が勧められるのか

「少しでも別のがんができる可能性があるなら、放射線治療を受けないほうがよいのでは」

そう思うのも自然なことです。

ここで大切なのは、放射線治療は、長期的なリスクがゼロだから行われるのではないということです。

放射線治療には、

  • がんを治すことを目指す
  • 手術後に残っている可能性のあるがん細胞へ照射し、再発の可能性を下げる
  • がんの進行を抑える
  • 痛みなどの症状をやわらげる

など、さまざまな目的があります。

がんの種類や進行度、手術の内容、年齢、体の状態、ほかに選べる治療などを踏まえ、

放射線治療によって期待できる利益が、
二次がんを含む将来のリスクや治療の負担を上回ると判断されたときに、治療が
勧められます。

「放射線治療を受けなければ、必ずもっと危険になる」と、
すべての方に一律に言えるわけではありません。治療の目的も、期待できる効果も、
一人ひとり違うからです。

たとえば、乳房温存手術後の放射線治療では、
17の無作為化試験、1万801人分のデータをまとめた研究で、
再発と乳がんによる死亡を減らすことが報告されています。

ただし、治療によってどれだけ再発の可能性が下がるかは、
年齢やがんの特徴などによって異なります。

これは乳がんでの一例であり、すべてのがんに同じ数字を当てはめられるわけではありません。EBCTCGによる研究

だからこそ、「一般的に治療したほうがよいか」ではなく、
自分の場合、この治療で何を目指し、どのくらいの利益が期待されているのか
確認することが大切です。

照射する場所以外にも、放射線が広がるの?

「放射線をあてると、全身が放射線を浴びるのでは」と心配になる方もいます。

多くの外部照射では、治療が必要な範囲へ放射線を集中させるように計画します。
全身に同じ量の放射線をあてているわけではありません。

内部照射や全身照射などは仕組みが異なるため、
それぞれの治療法に応じた説明を確認する必要があります。

治療計画では、がんのある場所だけでなく、その周囲で治療が必要な範囲や、
できるだけ守りたい正常な臓器の位置も確認します。

そのうえで、どの方向から、どのくらいの量を、何回に分けて照射するかを計算します。

国立がん研究センター「放射線治療の実際」でも、
がんと正常組織それぞれの線量分布を計算して治療計画を立てると説明されています。

ただし、照射する範囲の近くにある正常な組織へ、放射線がまったくあたらないとは限りません。

治療に必要な範囲を保ちながら、周囲の正常組織にあたる量をできるだけ抑えるように計画します。

照射方法や守る必要のある臓器は、治療する部位によって異なります。

「新しい装置なら必ずリスクが低い」「高精度な治療なら二次がんは起こらない」とも言い切れません。

気になる場合は、

「私の治療では、近くのどの臓器に放射線があたる可能性がありますか」

「正常な臓器への放射線を減らすために、どのような計画をしていますか」

と聞いてみてください。

不安なとき、主治医や放射線腫瘍医に聞けること

二次がんの説明を聞いても、不安がすべて消えるとは限りません。

数字だけを聞くよりも、「自分の治療ではどう考えるのか」を確認したほうが、
治療を考える材料になります。

診察では、次のように聞いてみてください。

  • この放射線治療は、何を目指す治療ですか
  • 私の場合、放射線治療によって、どのような利益が期待できますか
  • 私の年齢や照射範囲では、二次がんを含めて、どのような長期的な影響を考えますか
  • 周囲の正常な臓器への放射線を減らすために、どのような工夫をしますか
  • 治療後の診察や検診は、どこで、どのくらいの間隔で続けますか

「二次がんは何%ですか」と聞いても、ご自身だけの正確な数字を示すのが難しい場合があります。

そのときは、

「数字で出すのが難しい場合、私が判断するために、何を知っておけばよいですか」

と聞き直してもかまいません。

主治医に聞きにくいときは、放射線腫瘍医の診察で確認したり、
看護師や放射線治療室のスタッフに「もう一度説明を聞きたい」と伝えたりする方法もあります。

診察が終わってから「聞けなかった」と気づいたときの相談先は、診察で医師に聞けなかったとき|がん相談支援センターの使い方で、もう少し詳しくまとめています。

また、がん相談支援センターでは、治療を受けている病院に通っていない方も、
無料・匿名で相談できます。ただし、治療方針を代わりに決める場所ではありません。

疑問を整理したり、主治医へ何を聞けばよいかを一緒に考えたりするために利用できます。

聞きたいことを診察前に整理しておきたい方は、がん治療の診察前メモ|聞きたいことを忘れないための準備⁠も使えます。記事内に、A4・1枚の無料PDFも用意しています。

治療が終わったあとに覚えておきたいこと

二次がんが心配だからといって、毎日その可能性を考え続ける必要はありません。

一方で、治療が終わったら放射線治療のことをすべて忘れてよい、という意味でもありません。

治療後の診察では、もとのがんの状態だけでなく、
治療から時間がたって現れる影響について確認することがあります。

どの診療科で、どのくらいの期間、どのような診察や検査を受けるかは、
がんの種類や治療内容によって違います。

特別な検査を自分で増やすのではなく、まずは、

  • 今後の通院先
  • 受ける予定の検査
  • 年齢や性別に応じたがん検診
  • 新しい症状が出たときの相談先

を確認しておくとよいでしょう。

治療後しばらくたってから気になる症状が出た場合も、
すぐに二次がんだと決めつける必要はありません。症状にはさまざまな原因があります。

まずは、現在かかっている主治医に相談してください。

必要があれば、放射線治療を受けた病院や放射線腫瘍医へ、
治療内容を確認してもらうことができます。

おわりに

「がんを治すための治療で、別のがんができるかもしれない」

この言葉だけを見れば、怖くなるのは自然なことです。

放射線治療による二次発がんのリスクはゼロではありません。
ただし、誰にでも同じ確率で起こるものではなく、治療後に見つかる別のがんが、
すべて放射線治療によるものでもありません。

放射線治療は、がんを治す、再発の可能性を下げる、進行を抑える、症状をやわらげるなど、
期待される利益と将来のリスクを比べたうえで勧められます。

不安が残ったまま自己判断で結論を出す前に、治療の開始時期も含めて、
早めに医療者へ確認してください。

まずは、次の一つを聞いてみてください。

「私の場合、この治療で何を目指し、どのような利益が期待されていますか」

二次がんの可能性を確認することは、治療を疑うことではありません。

病院の医療者と一緒に、ご自身の治療で期待できることと、
長期的に気をつけることを整理してから、治療に向き合っていければと思います。


※この記事は、放射線治療を受ける方の不安を整理するための一般的な情報です。診断や治療方針を決めるものではありません。二次発がんのリスクや放射線治療によって期待できる利益は、年齢、がんの種類、照射部位、線量、照射範囲、併用する治療などによって異なります。ご自身の治療については、主治医や放射線腫瘍医にご相談ください。

参考情報

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