お風呂あがりに、鏡の前で着替える。
治療している側の胸を見ても、皮膚はそれほど赤くない。
なのに、さっきから胸の奥のほうが、チクチクする。
一瞬だけ、針で刺されたようにズキッとくる日もある。
説明で聞いていたのは、「日焼けのように赤くなります」だった。
赤くないのに、どうして中がチクチク痛いんだろう。
手術のせいなのか、放射線のせいなのか。
……再発では。。。
そこまで考えて、考えるのをやめる。
そんな不安な夜を過ごしている方に向けて書きました。
私は看護師として約15年、うち約5年間は放射線治療に関わる認定看護師として働いてきました。
放射線治療室でも、皮膚の表面ではなく「中が痛い」という相談を受けることが時々あります。
この記事では、放射線を当てた側の乳房や胸壁に感じる痛みについて、
関係する可能性のあること、診察での伝え方、早めに相談したい変化を整理します。
なお、痛みではなく、乳房が張って重い・下着がきつくなったという変化については、乳がんの放射線治療で胸が張る・重いで別に扱っています。
放射線治療中や治療後に、乳房がチクチク痛むことはある
乳がんの放射線治療では、皮膚が赤くなる皮膚炎の他にも
照射した乳房や胸壁が少し腫れたり、硬くなったり、
チクチクと痛んだりすることがあります。
治療中だけでなく、治療が終わってからもしばらく痛みを感じる場合もあります。
胸の痛みは、放射線治療だけが原因とは限らない

ただし、胸の痛みには、手術した場所やその周りの神経への影響、
放射線治療や手術とは別の原因が関係している場合もあります。
そのため、痛み方だけで「放射線治療の影響」「手術の影響」と見分けることはできません。
原因を自分で先に決めてしまうより、
痛む場所やどう痛むのかをそのまま診察で伝えてしまう方が不安の解決が早いです。
「これ、再発じゃないよね」と思ったとき
ここが、いちばん聞きにくいところだと思います。
日本乳癌学会のガイドラインでは、
乳がんの手術後に慢性的に痛みが続く状態を「乳房切除後疼痛症候群」と呼び、
手術から10年たっても2割ほどの方に認められるという報告があり、決してまれなことではない、
と説明されています。
そして、多くは再発とは関連のない術後の慢性的な痛みであり、頻度や程度は時間とともに軽くなっていくことが多いとされています。
ですから、痛みがあること自体は、めずらしいことではありません。
ただし、ここから先は分けて考えてください。
「痛みが続くこと自体はよくある」ということと、「あなたの今の痛みが何から来ているか」は、
別の話です。
後者は、今ある痛みの感じ方だけで痛みの原因を自分で決められるものではありません。
だから私は、自分で結論を出す代わりに、見てもらってほしいと思っています。
見てもらわないと結局のところ、原因もわからず、安心することも次に進むこともできません。
不安な時間が少しでも短くなるようにどんな症状がどんな時にどのくらい続くのか、
メモをして診察の時に診てもらうことが1番です。
診察で伝えるときに、そろえておくとよいこと
痛みは、本人にしか分からないものです。
だからこそ、伝え方で受け取られ方が変わります。
診察の前に、次のことをメモしておくと話しやすくなります。
- どこが痛むか(皮膚の表面か、奥のほうか。指でさせる場所か)
- いつから続いているか
- どんな痛み方か(チクチク/ズキズキ/ピリッと電気が走る/押すと痛い)
- どんなときに強くなるか(下着が当たる、腕を上げる、夜になると、など)
- どのくらい続くか(一瞬なのか、しばらく残るのか)
- 生活に影響しているか(眠れない、家事の途中で止まる、など)
例えば、下のように伝えると伝えやすいです。
「治療した側の胸の、奥のほうがチクチクします。2週間くらい前からで、下着が当たると強くなる気がします」
これだけでも、医療者は見る場所や、確認する順番を決める目安になります。
診察前のメモの作り方は、がん治療の診察前メモにもまとめています。
痛みが軽くても、診察や治療室で伝えてよい

胸の痛みが一瞬でおさまったり、毎日ではなかったりすると、
「この程度なら言わなくてもよいかな」と迷うことがあります。
痛みが弱く、生活への影響がなく、強くなっていない場合でも、
同じ場所で繰り返しているときや、気になっているときは、次の診察で伝えてください。
診察の日に痛みが出ていなくてもかまいません。
治療期間中であれば、医師の診察日を待たず、次の照射で治療室へ行ったときに、
看護師や診療放射線技師へ伝えることもできます。
「胸の中がチクチクすることがあります」と話せば、必要に応じて相談先を案内してもらえます。
治療が終わったあとに痛みが続く場合は、
放射線治療科や乳腺外科などへ相談します。
病院によって相談先は異なるため、どこへ連絡すればよいか分からないときは、
治療を受けた病院へ確認してください。
一方、痛みが強くなっている場合や、赤み、腫れ、熱感など別の変化を伴う場合は、
次の「診察を待たずに相談したい変化」を目安にしてください。
次の診察を待たずに相談したい変化
次のような変化があるときは、次の診察を待たずに、治療を受けている病院へ連絡してください。
- 痛みが一か所に集中して、日ごとに強くなっている
- 皮膚が赤く腫れて、熱を持っている
- 皮膚がジュクジュクしてきた
- 痛みで眠れない日が続いている
- 新しいしこりや、皮膚のへこみに気づいた
この目安で決められないときは、連絡しても大丈夫です。
「こんなことで電話していいのかな」と迷っている状態そのものが、伝えていい情報です。
診察で伝えられるように、痛みを記録しておく

胸の痛みは、診察の日にちょうど強いとは限りません。
「先週のほうがつらかった」ということもあります。
痛みがあった日や強さをメモにして残しておくと、診察で経過を振り返りやすくなります。
あとから振り返りやすいように、治療中の症状を1日1回書き留められる
「放射線治療日記 乳房・胸壁編」(A4・PDF・全17ページ/980円)を作りました。
1〜5に丸をつけていく形なので、しんどい日でも続けやすいようにしています。
もちろん、手持ちのノートやスマホのメモでもかまいません。
専用の記録帳でなくても、痛みがあった日や強さが分かれば、診察で伝える材料になります。
→ 放射線治療日記 乳房・胸壁編を見る
まとめ
胸の中の痛みは、外から見えません。
鏡にも映りません。
だから、自分で説明できないと、なかったことになりやすい症状です。
見るのは、痛みの正体ではなく、今日の痛みの中身。
どこが、いつから、どんなふうに。
その3つを持っていけば、あとは治療を受けている病院のスタッフが、確かめる方向を決めてくれます。
※この記事は、一般的な情報をまとめたものです。診断や治療方針を決めるものではありません。症状の原因や対応については、必ず治療を受けている医療機関にご相談ください。
参考情報
- 日本乳癌学会「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版」Q23 乳がん手術後の合併症・後遺症について教えてください
- 日本乳癌学会「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版」Q37 乳房手術後の放射線療法の際にみられる副作用はどのようなものですか
- 国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療の実際」
- 国家公務員共済組合連合会 横浜栄共済病院「乳房温存療法の術後放射線治療について」

