放射線治療期間中、たばこは?|効果との関係と、今からできること

放射線治療とたばこの関係について解説するコラムの見出し画像 放射線治療前の準備

放射線治療の説明を受けるとき、
「たばこは吸われますか?」と聞かれることがあります。

正直に「はい」と答えたら、
やめなさいと言われるんじゃないか。

怒られるんじゃないか。

そう身構えて、
嘘をついたり、
「あ、はい、少しだけ」と
控えめに答える方も、いらっしゃいます。

こんにちは。
元がん放射線療法看護認定看護師 しおりです。

この記事は、たばこを吸っている方を
責めるために書いたものではありません。

ただ、知らないままでいてほしくない事実が、一つあります。

喫煙を続けることは、放射線治療の効果を下げる原因になると考えられています。

私が患者さんにお伝えしていたのも、まさにそこでした。

「治療の効果を高めるためには、
吸わないことが1番なんですけどね……」

実際には
患者さんのことなので、「やめて」と強く言い切ることも、
責めることもできません。

でも、影響があるということを知らないままにしていてはいけない。

伝えて、
自ら「やめなきゃいけないな」と思ってもらうにはどうしたら良いのか。

たくさん考えてきました。

この記事では、
なぜ効果に関わるのか、
そして今からできることを整理します。

なぜ「たばこを吸いますか」と聞かれるのか

治療の前に喫煙のことを聞かれるのは、
生活習慣を注意するためではありません。

治療そのものに関わるからです。

国立がん研究センターの情報では、

喫煙を続けることは治療の効果を下げる原因になると考えられており、
薬物療法や放射線治療の効果が下がることも報告されている

と説明されています。

つまり、たばこを吸っているかどうかは、
「その人の生活の話」ではなく、
「治療がどれくらい効くかに関わる情報」として
聞かれているということです。

だから、正直に答えて大丈夫です。
少なめに言う必要も、隠す必要もありません。

がんの種類によって、影響の大きさは違う

影響の程度は、
どのがんを、どんな治療で治そうとしているかによって変わります。

特にたばこが影響するとはっきりしているのは、頭やのどのがん(頭頸部がん)です。

日本麻酔科学会のガイドラインには、

頭頸部がんの患者さんでは、
喫煙を続けていると放射線療法の有効性が低下し、
生存率が下がるとされる

と記載されています。

口やのどは、たばこの煙が直接通る場所です。
そこに放射線を当てながら、煙も通し続ける。

そう考えると、影響が大きいのも想像しやすいかもしれません。

一方、乳房や骨盤など、
煙が直接通らない場所への治療でも、
喫煙が体に与える影響がないというわけではありません。

自分の治療でどの程度影響があるのかは、
治療計画を立てた医師がよく知っています。

気になるときは、そのまま聞いてみてください。

治療中の副作用にも関わる

効果の話だけではありません。

たばこの煙は、粘膜への刺激になります。

放射線で弱っているところに、
さらに刺激が加わることになります。

頭頸部の放射線治療では、治療そのものによって、口の中やのどの痛み、
口の渇きが出ることがあります。

症状があるときに喫煙すると、たばこの煙による刺激で、痛みや不快感につながることがあります。

口やのどの渇きへの工夫はこちらの記事にまとめています。

治療そのものがつらいのに、
その上に刺激を重ねてしまう。

口の中が痛くて食べられないときの工夫は、こちらの記事にあります。

なので、そこは、しっかりとお話しして、
たばこを吸わない努力をしてもらうように
お話をすすめることがありました。

吸ってしまう自分を責める前に

ここが、いちばんお伝えしたいところです。

「やめたほうがいい」と言われて、
やめられるなら、とっくにやめている。

そう思われた方も、いらっしゃると思います。
その通りだと思います。

国立がん研究センターの情報にも、

たばこには依存性があるため、
自分の力だけではやめたくてもやめられない場合がある

と書かれています。

やめられないのは、気持ちが弱いからではありません。

これは、公的な機関がはっきり認めていることです。

だから、
「やめられない自分はダメだ」と
自分を責める必要はありません。

自分を責める代わりに、
たばこをやめるために使えるものを知っておくことが大切です。

保険で、禁煙の治療が受けられる

意志の力だけで何とかしなくていい理由が、ここにあります。

日本では、保険診療で禁煙治療を受けることができます。

そして国立がん研究センターの情報では、
がんと診断された人で禁煙治療を希望する場合は、
まず、がんの治療の担当医に相談するよう案内されています。

別の病院を探す必要はありません。

今かかっている先生に、そのまま言っていいのです。

「やめたいけど、自分では難しくて」

そのひと言からで大丈夫です。

医師のほうから禁煙外来を紹介してもらえることもありますし、
病院によっては院内に窓口があることもあります。

「今さらやめても」と思っている方へ

長く吸ってきた方ほど、
こう思われることがあります。

「今さらやめても、もう遅いんじゃないか」
「どうせ私の身体なんだし、好きなようにして良いでしょ」

でも、この記事で扱っているのは、
これまで吸ってきたことの話ではありません。

これから受ける治療が、どれくらい効くかの話です。

国立がん研究センターの情報でも、

禁煙することによって、
治療の効果が下がることを防ぐことができる


と説明されています。

過去を取り消すことはできませんが、
これからの治療の条件は、
今からでも変えられる部分があるということです。

だから、
「もう手遅れ」と自分で決めてしまわないでください。

完全にやめられなくても

現実には、
すぐにやめることはできない方もいらっしゃいます。

治療の不安が強いとき、
たばこが唯一の息抜きになっている方もいます。

その気持ちを、否定するつもりはありません。

そういうときも、隠さずに伝えてください。

「減らしてはいるけど、まだ吸っています」
「やめたいけど、まだできていません」

正直に言ってもらえたほうが、
医療者は現実に合わせて考えられます。

たとえば、
口の中の症状が出やすい治療なら、
そこを重点的に見ることができます。

禁煙のサポートを、どの段階で入れるかも相談できます。

隠されてしまうと、
その調整ができません。

責められるのが怖くて言えない、
という気持ちは、よく分かります。

それでも、正直に話せる相手を一人つくっておくと、
治療の期間が楽になります。

放射線治療を受ける方の家族の方へ

もし、この記事を
ご家族の立場で読んでいる方がいたら。

本人にたばこをやめてほしい。
でも、言うと関係が悪くなる。
そう悩まれている方も多いと思います。

責めるより、
「一緒に先生に聞いてみようか」と
医療につなぐほうが、うまくいくことがあります。

やめられないことを家庭内の問題にせず、
相談できる場所があると伝える。

それだけでも、本人の負担は変わります。

おわりに

最後に、整理します。

  • 喫煙を続けることは、放射線治療の効果を下げる原因になると考えられています
  • 影響の大きさは、がんの種類によって違います。頭頸部のがんでは特にはっきりしています
  • やめられないのは、意志の問題ではありません。依存性があると公的機関も認めています
  • 保険診療で禁煙治療を受けられます。まずは、がんの治療の担当医に相談できます
  • すぐにやめられなくても、隠さず伝えてください

治療の効果を高めるためには、
吸わないことが1番。

それは、変えられない事実です。

でも、それを知ったうえで、
どうするかを決めるのは、あなたです。

一人で決めなくていいですし、
一人でやめなくても大丈夫です。

治療のことも、たばこのことも、
主治医や治療室のスタッフと
一緒に考えていけます。


この記事は、放射線治療を受ける方の参考に、一般的な情報をまとめたものです。 喫煙が治療に与える影響の程度は、がんの種類、治療の目的、喫煙の状況などによって異なります。ご自分の治療については、必ず治療を受けている医療機関にご確認ください。禁煙治療については、保険適用の条件が定められています。詳しくは、担当医または禁煙外来にご相談ください。

参考情報

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