乳がんの放射線治療で喉が痛いのはなぜ|鎖骨の上への照射

のどに手を添える女性と「乳房の治療なのに のどが痛い」の文字で、乳がんの放射線治療における鎖骨の上への照射との関係を示したアイキャッチ 治療中の副作用

夕食を口にして、いつものように飲み込んだとき。


のどの奥が、ひりっとしみた。


熱いお茶を飲むと、さらに痛む。

治療しているのは乳房だけど、のど?
風邪でもひいたのかな。

そう思いながら、次の診察まで様子を見ようとしている方がいらっしゃるかもしれません。

先にお伝えします。

乳房の放射線治療でも、鎖骨の上まで放射線を当てている場合には、
一時的にのどの違和感や、飲み込むときの痛みが出ることがあります。

私は看護師として約15年、うち約5年間は認定看護師として、がん治療を受ける方のそばにいました。
放射線治療室では、この「乳房の治療なのに、のど?」という戸惑いに、何度か出会っています。

この記事では、なぜのどに症状が出るのか、自分の照射範囲をどう確かめるのか、
飲み込むのがつらいときの食事の工夫、そして病院へ伝えるタイミングを整理します。

【PR】本記事にはアフィリエイト広告が含まれています。

なぜ、乳房の治療なのに、のどに症状が出るのか

鎖骨の上まで照射すると、食道の一部にも放射線が当たることがあるから

乳がんの手術後の放射線治療では、多くの場合、残した乳房や手術した側の胸壁に照射します。

ただし、リンパ節に転移があった場合などには、鎖骨の上の部分(鎖骨上窩)も照射範囲に含めることがあります

鎖骨の上にあるリンパ節を含む領域での再発を減らすためです。

食道は、のどから胸の中を通って胃へ続いています。

鎖骨の上まで照射する場合、その範囲の近くにある食道の一部にも、放射線が当たることがあります

食道の粘膜に炎症が起こると、食べ物や飲み物が通るときに、のどの違和感やしみる感じ、
飲み込むときの痛みが出ることがあります。

このように、乳房の放射線治療中に感じるのどの痛みには、
鎖骨上照射による食道の炎症が関係していることがあります。

左側の治療で起こりやすいとされている

食道の位置や照射方法との関係で、左乳がんの患者さんの場合
食道が照射範囲に入りやすいことがあります。

もちろん、左だから必ず起こるわけでも、右だから絶対に起こらないわけでもありません。

関連記事:左乳がんの放射線治療で息止めが不安なとき

乳房だけに当てている場合は、のどは範囲に入らない

放射線の影響は、原則として放射線が当たった場所に出ます。

ですから、乳房や胸壁だけを照射している場合、通常、のどは照射範囲に含まれません。

「私も同じことが起きるのでは」と、この記事を読んで不安になる必要はありません。

ただし、ここで注意していただきたいことがあります。

照射範囲だけで、のどの痛みの原因を決めることはできません。

治療中でも風邪はひきますし、口やのどの乾燥、そのほかの原因が重なっていることもあります。

原因が一つとは限りません

「照射範囲に入っていないから、放射線のせいじゃない。だから様子を見よう」ではなく、「痛みがあることを伝えて、確かめてもらう」と考えてください。

自分がどこまで照射しているか、確かめる方法

意外に思われるかもしれませんが、自分の照射範囲を正確に説明できる方は、そう多くありません。

治療開始前に説明を受けていても、その日はほかにも情報がたくさんあります。

覚えていなくて当然です。

照射する範囲は、治療の前に撮る計画CTをもとに、あらかじめ決められています。

ただし、追加照射などで治療の途中に範囲が変わる場合もあります。

つまり、自分がどこまで照射しているのか、、

それは、

聞けば分かります。

確かめ方は、たとえばこんな方法があります。

  • 治療室で、放射線技師や看護師に「私は鎖骨の上まで当てていますか」と聞く
  • 治療開始前に渡された説明書や同意書を見返す
  • 放射線治療の診察のときに、担当医に確認する

皮膚の印は、毎回同じ位置で治療するための目印です。

なお、照射範囲が分かると、皮膚のケアやむだ毛の処理をどこまで気をつければよいかも見えてきます。範囲まわりの皮膚については、乳房の放射線治療中にわき毛は剃っていいにまとめています。

照射範囲そのものを示しているとは限らないため、印だけで判断せず、スタッフに確認してください。

聞くときは、「のどが痛い」という症状と一緒に伝えると、話が早く進みます。

飲み込むのがつらいとき、食事でできること

刺激になりやすいものを、少し避ける

のどの違和感や飲み込むときの痛みがある場合について、次のものを避けるように案内することが多いです。

  • アルコール
  • 香辛料など刺激の強いもの
  • 過度に熱い食べ物

粘膜が敏感になっているときは、いつもなら平気なものが刺激になることがあります。

熱いお茶やスープは、少し冷ますと刺激を減らせることがあります。

つらいときに避けるものを、いくつか分かっていれば十分です。

通りやすい形にする

固いものやパサつくものは、炎症のある粘膜を刺激し、飲み込みにくく感じることがあります。

  • やわらかく煮る、蒸す
  • 汁物やあんをかけて、しっとりさせる
  • あんなどで、料理にとろみをつける
  • 一口を小さくして、ゆっくり飲み込む

などして、通りやすい形にしましょう。

冷たいものが食べやすい方もいますが、冷たさがしみる方もいます。
熱すぎるものは避け、自分が刺激を感じにくい温度を選んでください。


また、ヨーグルト、豆腐、茶碗蒸し、プリンなど、口当たりのやわらかいものは、
つらい日の助けになる方もいらっしゃいます。

「食べられる量」と「水分」の両方を見る

食事が減ることより先に気にしていただきたいのが、水分です。

飲み込むときに痛いと、無意識に水分まで控えてしまうことがあります。

食事量だけでなく、水分がとれているかも確認したいところです。

痛みで飲む量が減ると、脱水につながることがあります。

一度にたくさん飲めないときは、回数を分けてかまいません。

水や麦茶、冷ましたスープなど、自分がしみにくいものを少量ずつ用意しましょう。

水分の種類や量に制限がある方は、病院の指示を優先してください。

口の中にも痛みやただれがある方は、こちらの記事も参考にしてください。

食事を作る負担を減らしたいとき

のどがしみる日は、何を食べるか考え、やわらかく調理すること自体が負担になることがあります。

やわらかいものなら口にできるけれど、毎回用意するのはつらい。

そんなときは、温めるだけの市販品を使うという方法があります。

「野菜をMOTTO」は、カップのまま電子レンジで約1分温められ、常温で保存できるスープです。

選べるセットなら、ポタージュなど、そのとき食べやすそうな味や形を選べます。

ただし、食道の炎症に合わせて作られた食品ではありません。

商品によっては、大きな具材、酸味、香辛料などが刺激になることがあります。

原材料や形を確認し、自分が刺激を感じにくい温度まで冷まして、少量から試してください。

※これだけで食事や栄養が十分になるものでもありません。
 また、アレルギーや食事制限がある方は、商品表示と病院からの指示を確認してください。

水分も取りにくいときや、食事量が明らかに減っているときは、商品を探すより先に病院へ伝えてください。

病院へ伝えるタイミング

放射線治療には、ほかの治療にはない特徴があります。

平日は毎日、病院に行くということです。

つまり、次の診察を待たなくても、その日の治療のときに伝えられます。

「診察の日じゃないから」と我慢する必要はありません。
治療室のスタッフは、毎日あなたの様子を見ています。

伝えていただければ、必要に応じて診察につないでもらえます。

伝えるときに、まとめておくと良いこと

  • いつごろから、しみる感じが出てきたか
  • どんなものを食べるとつらいか
  • 食事の量は、以前と比べてどうか
  • 水分はとれているか
  • 体重が減っていないか

これだけで、状況がぐっと伝わりやすくなります。

待たずに伝えたい変化

  • 食べる量が明らかに減っている
  • 水分がとりにくくなっている
  • 痛みが強く、食事や睡眠に支障が出ている
  • 発熱や、いつもと違う強いだるさがある

このような変化があるときは、治療を受けている病院へ、その日のうちに連絡してください。

夜間や休日は、病院から案内されている連絡方法に従ってください。

次の診察で伝えたいことや、聞きたいことも整理しておきたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

治療が終わったあとのこと

多くの場合、この症状は「一時的」と説明されています。

多くの場合、治療が終われば、粘膜は少しずつ回復していきます。

ただ、回復の早さには個人差があります。

治療が終わってからも気になる変化が続くときは、まず今かかっている主治医に相談してください。

必要であれば、主治医から放射線治療を受けた病院へ問い合わせてもらう流れになります。

治療が終わったあとに相談することは、遅すぎるのではと思い遠慮する必要はありません。

のどのほかに、照射している乳房の皮膚や乳首がヒリヒリしてきたときは、乳がんの放射線治療で乳首が痛いもあわせてどうぞ。

まとめ

  • 乳房の放射線治療でも、鎖骨の上まで照射する場合は、食道の一部に放射線が当たることがある
  • そのとき、一時的にのどの違和感や、飲み込むときの痛みが出ることがある(特に左側)
  • 乳房だけに照射している場合、のどは範囲に入らない。ただし、範囲だけで原因は決められない
  • 自分の照射範囲は、治療計画で決まっている。治療室で聞けば分かる
  • 熱すぎるもの、香辛料、アルコールを控え、通りやすい形にすると食べやすくなることがある
  • 毎日通う治療だからこそ、次の診察を待たずに、その日の治療室で伝えられる

のどの奥のことは、外からは見えません。

見えないからこそ、言葉にして分かってもらう必要があります。

その一言が、痛みへの対応を始めるきっかけになります。


※この記事は、放射線治療の一般的な情報をまとめたものです。治療の内容や照射範囲は一人ひとり異なります。ご自身の症状や治療については、必ず治療を受けている医療機関にご確認ください。

参考情報


この記事を書いた人
しおり

元がん放射線療法看護認定看護師です。がん治療中の方やご家族が、治療中の生活や不安を少し整理できるように、看護師としての経験をもとに情報をまとめています。

しおりをフォローする
治療中の副作用
しおりをフォローする
タイトルとURLをコピーしました