朝、いつもの下着をつける。
ホックの位置が、少し合わない。
腕を下ろして立っていると、なんとなく片方の胸だけ重い。
痩せたわけでも、太ったわけでもない。
なのに、下着がなんか合わなくなってきた。
「腕がむくむことがある、とは聞いていたけれど、胸が張るなんて聞いていない」
そんなふうに感じている方に向けて書きました。
私は看護師として約15年、うち約5年間は放射線治療の認定看護師として働いてきました。
この記事では、主に乳房部分切除術(温存手術)のあと、
残った乳房に放射線治療を受けている方に向けて、乳房の張りや重さの変化、
下着の選び方、診察で伝えることを整理します。
なお、皮膚炎による痛みではなく乳房の奥のほうがチクチクするという感覚については、
乳がんの放射線治療で胸がチクチク痛いで別に扱っていますのでぜひ、参考にしてください。
治療中に乳房が張って、やや硬く感じることがある
国立がん研究センターのがん情報サービスでは、乳房部分切除術後の放射線治療について、
照射後に乳房が腫れてやや硬くなることがあると説明しています。
日本乳癌学会の2023年版ガイドラインにも、乳房全体が少し腫れ、やや硬くなったり、
痛んだりすることがあると記載されています。
そのため、体重が変わっていなくても、治療している側のカップがきつくなったり、
乳房が張る・重いと感じたりすることがあります。
乳房の張りだけで原因は決められない

乳房の張りや重さには、手術後の腫れや、放射線治療に伴う一時的な変化が関係することがあります。
ただし、見た目や張り方だけで、原因をはっきりさせることはできません。
自分でこれだと決めつけるのではなく、
診察のときに、乳房の変化や、わき・腕・手にも腫れや重さがあるのかを、伝えてみてください。
一人で不安をずっと抱え込まないでください。
また、腕のむくみや肩の動かしにくさが気になる方は、
乳房の放射線治療のあと、腕がむくむ・肩が動かしにくいと感じたらもご覧ください。
乳房の腫れは、時間とともに落ち着くことがある
乳房部分切除術後の放射線治療では、
治療中から治療後まもなくに、
乳房が少し腫れたり、
硬く感じたりすることがあります。
こうした変化は、
時間とともに落ち着くことが多いとされています。
ただし、元の大きさや硬さに
必ず戻るという意味ではありません。
治療後しばらくたってからの
乳房の大きさや硬さの変化については、
乳房の放射線治療のあと、硬さや色が気になるとき
にまとめています。
下着が合わなくなったときの工夫

治療中は、皮膚も敏感になっています。サイズが合わない下着を無理に使うと、こすれが増えます。
無理に元の下着に戻さず、いまの状態に合わせてみてください。
- ワイヤーの入っていない、ゆったりしたソフトブラにする
- カップ付きのタンクトップやキャミソールで代える
- 綿など、肌当たりのやわらかい素材を選ぶ
- ホックの位置を、いつもよりひとつゆるめる
- 家にいる時間は、締めつけないものに着替える
今までの下着が食い込むときは、我慢して使い続ける必要はありません。
治療中の下着とスキンケアについては、乳房の放射線治療で肌が赤くなってきたときにも書いています。
診察で伝えるときに、そろえておくとよいこと
胸の張りは、鏡を見ただけでは分かりにくい変化です。
- いつから気になっているか
- 左右で違いがあるか(治療している側だけか)
- 下着がどう変わったか(ホックの位置、カップのきつさ)
- 重さを感じる場面(腕を下ろしているとき、夕方、など)
- 1日の中で変わるか(朝と夜で違うか)
そのまま言える形にすると、こうなります。
「治療している側だけ、下着がきつくなりました。2週間くらい前からで、夕方のほうが重く感じます」
体重が変わっていないなら、それも一緒に伝えてください。判断の材料になります。
診察前のメモの作り方は、がん治療の診察前メモにまとめています。無料のPDFも置いています。
次の診察を待たずに相談したい変化

次のような変化があるときは、次の診察を待たずに、治療を受けている病院へ連絡してください。
- 皮膚が赤く腫れて、熱を持っている
- 急に大きくなってきた、または日ごとに変わっている
- 熱が出ている
- 皮膚がジュクジュクしてきた
- 新しいしこりや、皮膚のへこみに気づいた
この目安で決められないときは、連絡していいときです。
連絡するときは、
「いつから」
「どちら側が」
「熱や痛みはあるか」
を伝えてください。
毎日の記録が、診察の材料になる
胸の張りは、日によって波があります。診察の日にちょうど強いとは限りません。
そこで、治療中の変化を1日1回だけ書き留めておく記録帳を作りました。
「放射線治療日記 乳房・胸壁編」には、
「乳房のはり・むくみ感」も記録項目として入れています。
1〜5に丸をつける形で、日ごとの変化を残しやすくしています。
専用の記録帳でなくても、日付、張りの強さ、下着がどの部分できつかったかを残しておけば、
診察で伝える材料になります。
おわりに
乳房部分切除術後の放射線治療では、治療している側の乳房が張る、
重い、やや硬いと感じることがあります。
こうした変化は、時間とともに落ち着くことがあります。
ただし、見た目や張り方だけで原因を決めることはできません。
下着がきついときは、食い込みやこすれを我慢せず、
いまの乳房と皮膚の状態に合うものを選んでください。
診察で伝えるときは、
「いつから」
「どちら側が」
「どんなときに強くなるか」
「わきや腕にも変化があるか」
をそろえておくと、乳房に起きている変化を確認する手がかりになります。
赤みや熱、急な腫れ、発熱などがあるときは、次
の診察を待たずに、治療を受けている病院へ連絡してください。
乳房の変化に自分で名前をつけるより、いま起きていることを、そのまま伝える。
そこから、必要な確認につながります。
※この記事は、一般的な情報をまとめたものです。診断や治療方針を決めるものではありません。症状の原因や対応については、必ず治療を受けている医療機関にご相談ください。
参考情報
- 国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 治療」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「リンパ浮腫」
- 日本乳癌学会「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版」Q37 乳房手術後の放射線療法の際にみられる副作用はどのようなものですか
- 国立がん研究センター がん情報サービス「放射線治療の実際」

